スキル・キャリア江上剛の「働き方は孔子に聞こう!」

嫉妬心をコントロールする言葉「人を知らざるを患ふ」

江上剛 / 作家

Q 嫉妬心でイライラします。どうしたらいいでしょう

A 安心してください、孔子だって嫉妬に苦しんでいたんです

 会社の中は嫉妬に満ちている。一斉にスタートラインに立っていたはずなのにいつの間にか、あなたは他の人間の後塵(こうじん)を拝している。理由は納得がいかない。あなたの方が成績も良い。それなのにどうしてあの男より昇給、昇格が遅れるのか。

 絶対に納得がいかない。嫉妬心がめらめらと燃え上がる。理由を調べると、学閥、閨閥(けいばつ)、縁故、世襲などあなたの努力ではどうしようもない理由ばかり。こうなるとあなたの嫉妬心の収めどころがない。毎日、イライラウツウツ。

 会社のトップになっても嫉妬心は収まらない。東芝は日立製作所に嫉妬心を燃やしていたと言われる。それが不正会計の引き金になったともいわれる。

人間にとりついた業

 このように一度燃え上がると、全てを焼きつくすまで収まらないのが嫉妬だ。他人をうらやむ心が嫉妬心。これをコントロールするために宗教が生まれたと言っても過言ではない。それほど人間に取りついた業(ごう)とでもいうべきものだ。

 孔子も世に受け入れられなかった。きっと嫉妬に苦しむ日々もあったことだろう。

 しかし孔子は言う。

 「人の己を知らざるを患(うれ)へず。人を知らざるを患ふ」

 他人の評価や、他人から認められようなどということはどうでもよい。それよりも自分が他の道を求める人を知らないことの方が問題だ。

 孔子は、他人の評価などに一喜一憂するなと言い続けている。きっと弟子たちは、孔子に従うよりもっと出世の道が早い師匠につきたいと思っていたからだろう。そして孔子の下を去っていく弟子もいたに違いない。そんなとき孔子といえども他者に対して嫉妬心を抱かぬはずがない。

 「君子も亦悪(にく)むことあるか」と、孔子は弟子から他人を憎むことがあるかと聞かれる。孔子は、とても素直だ。「悪むことあり。人の悪を称する者を悪む。下流に居(い)て上をそしる者を悪む。勇にして礼なき者を悪む。果敢にして窒(ふさ)がる者を悪む」と答える。

孔子が憎むのは、人の悪を言いふらす者

 孔子が憎むのは、人の悪を言いふらす者、世の中の下流にいて上のやることをそしるだけの者、勇気があっても礼節がない者、果敢に進むが、他人の意見に耳を傾けない者だ。

 孔子が憎むのは、人間の道として外れた者ばかり。これを孔子の嫉妬心コントロールと考えればどういう意味になるだろうか。

 人の悪を言いふらすとは、孔子の悪評を言いふらすこと。下流にいて上のやることをそしるとは、たいして修業もしていないのに孔子の悪口を言う者、勇気があっても礼節の無い者とは、孔子に対して失礼な者、果敢に進むが他人の意見に耳を傾けない者とは、孔子の意見を受け入れない者ということになるだろうか。

 孔子だって調子が良いだけの、世渡り上手は憎くて仕方がないのだ。そう考えれば、あなたが嫉妬心に駆られるのは当然のことだ。安心してよい。ただしそれに身を焦がし、身を悪くするのは愚の骨頂ということだ。

 <次回「「30代で自分の生き方を見極める」孔子もそうだった」>

    ◇    ◇

 この連載は、江上剛さんの著書「働き方という病」(徳間書店)を、ウェブ向けに編集し直したものです。職場で多くの人が抱えている悩みを江上さんに問いかけ、どうしたらいいか答えてもらいます。江上さんは、古典「論語」の孔子の言葉を参考にしながらサラリーマンの生き方をアドバイスします。毎週月曜日の掲載です。

 江上さんの最新刊「クロカネの道 鉄道の父・井上勝」が3月16日にPHP研究所から出版されました。長州藩出身で、明治政府で鉄道敷設に力を尽くし、「日本の鉄道の父」と呼ばれた井上勝を描きます。

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江上剛

江上剛

作家

1954年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。77年旧第一勧銀(現みずほ銀行)に入行。97年、総会屋利益供与事件に遭遇し、広報部次長として混乱収拾に尽力。在職中の2002年「非情銀行」で作家デビュー。03年にみずほ銀行を退行。近著に「働き方という病」など。テレビコメンテーターとしても活躍している。

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