販売店でiPhone7を購入した大学生=東京都渋谷区で
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月1回定休日導入へドコモショップにも働き方改革

北俊一 / 野村総合研究所上席コンサルタント

 働き方改革の波は、宅配業界や飲食業界、小売業界に対し、顧客接点で働く社員、スタッフの労働環境の抜本的改善を迫っている。

 「サービスが先、利益は後」というヤマト運輸創業者の経営哲学が、日本の宅配サービスの水準を猛烈に高めたことは間違いない。共働き世帯の増加がネット通販への依存を強め、同時に再配達率も上昇させはしたが、事業者間の競争が機能して、値上げをせずに吸収してきた。しかしふたを開けてみれば、現場で働くスタッフに負担を押しつけていただけだった。

 今回の働き方改革の波を好機と捉え、「価値あるサービスには対価を払う」という社会に転換することが重要だ。それはケータイショップの場合も同じだろう。

ドコモショップ2000店に月1回定休日を導入

 ドコモショップが定休日の導入を進めるというニュースが、今週報じられた。これまでは原則年中無休だったが、月1日の定休日を設けるというものだ。9月末までに全店の8割に当たる約2000店に広げるという。

 ドコモのホームページを見ると、例えば東京都中央区の8店舗のうち、6店舗が5月から月1日の定休日を定めている。ただし、第1火曜、第2火曜、第2水曜、第3日曜など、近隣のショップ間で定休日の調整を図っている。

 これはケータイ業界としては画期的なことだ。近隣の他店より1日でも多く店を開くことで売り負けない、という競争の行き着いた先が、年中無休だった。しかし今回、ショップスタッフが働きやすい環境を整えることこそサービス向上、顧客満足度の向上につながるという方向へ転換したことになる。この動きがauショップ、ソフトバンクショップにも広がることを期待したい。

営業時間短縮や受け付け予約制導入も

 もう一つの重要な取り組みが、ケータイショップの閉店時間や最終受付時間の変更だ。先ほどのホームページをみると、これまでは原則10時開店、20時閉店だったが、「5月から平日に限り19時閉店とさせていただきます」という内容の記載がある。

 auショップも同様に、開店を1時間遅くして11時に、あるいは閉店を1時間早めて19時にして、営業時間を1時間短くする動きが進んでいる。この1時間の短縮は、ショップを運営する販売代理店にとって大きな意味がある。所定労働時間が8時間以内に収まることで、シフト勤務を組む必要がなくなるのだ。

 しかし、それだけでは十分ではない。例えば19時の閉店時間ぎりぎりにお客さまがショップに駆け込んでくれば、スタッフが店を出るのは結局21時、22時になってしまう。ショップスタッフに話を聞くと、「帰りが遅くなること以上に、何時に帰れるか分からず、ドタキャンとなる可能性があるので、友人と夕食の約束もできない」ということがストレスになっているという。

 新規契約やMNP(モバイル・ナンバー・ポータビリティー)など、対応に時間がかかる業務については、最終受付時間を18時に早める、事前予約制にするなどの対応を検討する必要があるだろう。

サービス水準をどう維持するか

 とはいえ、格安スマホが普及する中、大手携帯電話事業者が格安スマホ事業者より優位に立てる要素は、ネットワーク品質と手厚いサービスだ。ドコモ、au、ソフトバンクとも、全国津々浦々にそれぞれ2500前後のショップを抱えており、年中無休でいつでもどこでも駆け込める安心感があった。

 働き方改革の波は、ショップスタッフの労働環境を大きく改善するだろう。これが行き過ぎると、サービス水準が低下し、格安スマホへの顧客流出が進んでしまうかもしれない。顧客サービスの水準と、ショップスタッフの労働環境改善の、ほどよい着地点を模索する動きがしばらく続くだろう。

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北俊一

北俊一

野村総合研究所上席コンサルタント

1965年、横浜市生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修了。90年株式会社野村総合研究所入社。四半世紀にわたり、情報通信関連領域における調査・コンサルティング業務に従事。専門は、競争戦略、事業戦略、マーケティング戦略立案及び情報通信政策策定支援。総務省情報通信審議会専門委員。

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