主演のタラネ・アリドゥスティ(C)MEMENTOFILMS PRODUCTION–ASGHAR FARHADI PRODUCTION–ARTE FRANCE CINEMA 2016
主演のタラネ・アリドゥスティ(C)MEMENTOFILMS PRODUCTION–ASGHAR FARHADI PRODUCTION–ARTE FRANCE CINEMA 2016

社会・カルチャー週末シネマ

アカデミー賞「セールスマン」が描くイラン社会の深層

勝田友巳 / 毎日新聞学芸部長

 トランプ政権による“テロ支援国”からの渡航制限に対し、主演女優がアカデミー賞出席を拒否して声明を出し、作品は外国語映画賞を受賞。反トランプの象徴のように注目され、内容とは別のところで時流に乗った、いわば「政治銘柄」のイラン映画である。

 これが実態以上の高値なら要警戒だが、むしろもっと高く買われていい。政治とは切り離しても、優良な推奨作品だ。密度の高い不穏な空気が充満したサスペンスであり、知的なたくらみをはらんだ人間ドラマである。2016年の第69回カンヌ国際映画祭で脚本賞と男優賞を、第89回アカデミー賞で外国語映画賞を受賞した。

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勝田友巳

勝田友巳

毎日新聞学芸部長

1965年、茨城県出身。北海道大文学部卒。90年毎日新聞に入社し、松本支局、長野支局などを経て、東京本社学芸部。映画を担当して15年、新作映画を追いかける一方、カンヌ、ベルリンなど国際映画祭や撮影現場を訪ね、映画人にも話を聞いて回る日々。毎日新聞紙面で「京都カツドウ屋60年 馬場正男と撮影所」「奇跡 軌跡 毎日映コン70年」の、2本の映画史ものを連載中。