スキル・キャリア思いを伝える技術

プライドの高い人の文章を手直しするときは要注意

川井龍介 / ジャーナリスト

 他人の書いた文章について、批評や意見を求められることがあります。会社内で、「○○社宛てにメールを書いたんだけど、こんな感じでいいか、意見をほしいんだが」などと、上司に言われるような場合です。

 自分の書いたメールを上司に確認してもらったり、仕事の報告書や社内報に書く原稿を事前に批評してもらったりすることもあります。

 記事を書く仕事をしている人も、原稿のチェックを受けます。チェックの厳しさは媒体によって違いますが、基本的に、書かれた事実が正しいか、意味が不明なところはないかを確認されます。私も自分の書いた原稿をチェックしてもらいますし、逆に原稿をチェックする仕事もしています。

 第三者に読んでもらう原稿は、他人の目で見てもらって間違いを訂正し、多くの読者に読まれるよう工夫することが必要です。自分の原稿を自分だけでチェックするのは限界があるからです。

修正すべき点を納得してもらうことの難しさ

 原稿のおかしなところを修正する過程で難しいことがあります。それは、筆者に修正すべき点を納得してもらうことです。

 言葉の使い方の間違いや事実関係の誤りなど、誰が見てもおかしい点は、筆者に容易に納得してもらえます。しかし、「原稿のこの部分の意味がつながらないので、書き直した方がいいです」と伝えたときに、「いや、自分としては、○○というつもりで書いたので、これで筋は通っていると思います」などと納得してくれないことがあります。

 妥当と思われる指摘や批評を、素直に認めてもらえない場合、指摘された内容に納得がいかないというより、別に理由があることがよくあります。

 ひとつは、筆者がとてもプライドの高い人で、自分の書いたものが「修正されるべきだ」と言われることに我慢ならないケースです。長年の経験から誤解を恐れずに言えば、医師や学者、それに学校の先生といった、日ごろあまり批判されることがない、“偉い”立場にいる人たちに目立つようです。この場合は難儀です。

言い方に気をつける必要がある

 もう一つは、指摘にはある程度納得する気持ちはあるけれど、相手の言い方に“カチン”と来た場合です。誰でも、自分の書いたものを直すように言われたらあまりいい気持ちはしません。「これじゃ、何言っているかわかりませんよ」などと言われたら、素直に聞けるものも聞けなくなります。「困っちゃうんですよね」などと、ネチネチした言い方をされたら、受け入れられにくいものです。指摘する側も言い方に気をつけなければなりません。

 上司や目上の人の書いたものを、「修正した方がいい」と言うときの言い方も難しいでしょう。「修正すること」が「正しいこと」でも、相手がそれを納得するとは限りません。目的は、相手に納得してもらい、よりよいものにしていくことであり、そのためには「正しいこと」を胸を張って一方的に主張するだけではだめです。

 こうした場合に対処する「特効薬」はありませんが、ひとつの方法として、「こんなふうにしたらどうでしょう」という具体的な修正案を示して、丁寧に説明してみることです。これによって、「なるほど」と納得してもらえることがあります。反論される場合でも、ではどうしたらいいのかといった建設的な議論が期待できるのではないでしょうか。

 <「思いを伝える技術」は、隔週水曜日に更新します>

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川井龍介

川井龍介

ジャーナリスト

1980年慶応大学法学部卒。新聞記者などを経てフリーのジャーナリスト、ノンフィクションライター。実用的な文章技術を説いた「伝えるための教科書」(岩波ジュニア新書)をはじめ「大和コロニー~フロリダに『日本』を残した男たち」(旬報社)、「フリーランスで生きるということ」(ちくまプリマ―新書)を2015年に出版。このほか「ノーノー・ボーイ」(ジョン・オカダ著、旬報社)の翻訳をてがける。

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