株主総会の会場に入る東芝の株主ら=千葉市美浜区の幕張メッセで2017年6月28日、佐々木順一撮影
株主総会の会場に入る東芝の株主ら=千葉市美浜区の幕張メッセで2017年6月28日、佐々木順一撮影

政治・経済東芝問題リポート

「ウエスタン・デジタルと全面対決」東芝に勝算はあるか

編集部

 東芝が定時株主総会を予定していた6月28日の午前9時半。総会開会のたった30分前に、東芝は1枚のプレスリリースを公表した。「東芝メモリ株式会社の株式譲渡契約の交渉状況に関するお知らせ」との題名だ。

東芝が株主総会開始30分前に公表したプレスリリース
東芝が株主総会開始30分前に公表したプレスリリース

 東芝は、半導体メモリー事業を分社化した東芝メモリを、産業革新機構などを中心とするコンソーシアム、いわゆる「日米韓連合」への売却を内定している。株主総会の前に最終的な合意を目指していたが、間に合わなかったという内容だ。

 リリースには、「コンソーシアム内の複数の当事者による調整等に時間を要しており、現時点で合意に達しておらず、現在も交渉中です」と書かれていた。最終合意に至らなかったのは、相手先の事情だという説明だ。言いたいことはわかるが、今後、日米韓連合に東芝メモリが売却されたとして、設備投資などで即断即決が必要なときに、「複数の当事者による調整」で、意思決定が遅れはしないかと、今から心配になる。

1200億円の賠償請求と情報アクセスを遮断

 そして、3時間9分にわたって開かれた株主総会が終了した直後の午後2時すぎ。東芝は今度は「ウエスタン・デジタル社に対する訴訟提起について」と題するプレスリリースを公表した。

米カリフォルニア州で2015年2月21日撮影
米カリフォルニア州で2015年2月21日撮影

 米ウエスタン・デジタルは、東芝が三重県の四日市工場で合弁で半導体メモリーを共同生産している相手だ。東芝メモリの売却に猛反発し、国際仲裁裁判所と、米国の裁判所に売却差し止めの訴えを起こしている。

 そのウエスタン・デジタルに対し、今後は東芝が「東芝メモリ売却の入札手続きに対して、看過できない妨害行為を継続的に行っている」として東京地裁に訴えたのである。東芝は、妨害行為の差し止めを求める仮処分命令の申し立てと、妨害行為で少なくとも1200億円の損害が生じているとして、その損害賠償を求めた。

 「共同開発に関する情報へのアクセス権を有する子会社の従業員をウエスタン・デジタル社に転籍させること等により、東芝および東芝メモリの機密情報を不正に取得・使用している」ことも指摘し、28日をもって、ウエスタン・デジタル社による情報のアクセスを遮断するとしている。もはや、全面対決に至ったということだ。

東芝の強硬姿勢に株主から不安の声

 ウエスタン・デジタルとの対立については、この日の株主総会でも質疑が行われた。ある株主は次のように不安の声を上げた。

 「半導体事業売却についての会社の説明で、『ウエスタン・デジタルが売却の邪魔をしている』という表現をしていたが、そこがうまくいかなかったら偉いことになる。ウエスタン・デジタルの後ろには米政府がついていると思われる。大丈夫なのか」

 これに対して成毛康雄副社長が回答した。

 「ウエスタン・デジタルは売却に反対し、東芝メモリの経営に参加したいと提案をいただいている。だが、提案が独占禁止法に抵触する内容だったり、提示金額がよくなかったり、入札に正式に参加されなかったりで、かみあった議論になっていない。歩み寄るところは歩み寄る、係争ごとはきちんとやり、早い解決を目指す」

 早い解決を目指すための手段が、東芝による反訴だったことになる。本来は半導体生産で協力しあわなければならないパートナーだが、全面対決は東芝にとって吉と出るか凶と出るか。

東芝メモリの社長を兼務する東芝の成毛康雄副社長(左)。右は東芝の綱川智社長=2017年1月27日、根岸基弘撮影
東芝メモリの社長を兼務する東芝の成毛康雄副社長(左)。右は東芝の綱川智社長=2017年1月27日、根岸基弘撮影

 <次回は近く掲載します>

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長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
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