日銀の黒田東彦総裁=2017年1月31日、長谷川直亮撮影
日銀の黒田東彦総裁=2017年1月31日、長谷川直亮撮影

マネー・金融ニッポン金融ウラの裏

「マイナス金利で赤字寸前」地銀が陥った“運用難地獄”

浪川攻 / 金融ジャーナリスト

 資金運用先を巡って悩みを深める地方銀行が続出している。マイナス金利政策の長期化で、国内の運用手段がほとんど消失したのに加えて、頼みの外債運用でも、前年度に多大な損失を発生させた金融機関が出たため、極めて慎重にならざるをえなくなったからだ。

 「昨年秋まで活発化していた邦銀による米国債投資がばたっと止まった」。ある外資系証券の幹部はこのように話す。日本の銀行はこれまで、外国銀行を相手に、円資金をドル資金にスワップ(交換)取引し、米国債などの外債投資を行ってきた。

ニューヨーク証券取引所
ニューヨーク証券取引所

外債投資も「極端に消極的に」

 ところが「前年度に発生した外債投資の損失を踏まえ、経営陣が外債投資に対して極端に消極的になった」(中堅地銀)というのだ。

 これまで、活発な外債投資が行われるなかで、円資金をドル資金に交換する取引の際には通常より高い上乗せ金利まで発生していた。外債投資が減少したことで、この上乗せ金利も解消に向かっている。

 上乗せ金利まで支払ってドル資金を確保しなければならない事情が消えたことだけをとれば、朗報のようにも聞こえる。ところが、実際には投資してきた地銀の多くが運用難で一段と深刻な状態に陥っているのだ。

 国内では唯一、利ザヤが得られる償還期間10年超の超長期国債への投資についても、「金融庁が金利リスクの観点から眉をひそめている」という情報が流れた。このため、超長期国債の運用にも歯止めがかかっている。もちろん、より短期の国債では利回りが低すぎて逆ザヤになってしまう。

投信解約益で赤字を免れる綱渡り

 前年度決算では、基礎的な収益力の悪化を補うために、評価益が得られている債券を売却する動きが出た。それだけではなく、含み益が蓄積されていた投資信託を解約して利益を出した地銀が少なくない。「投信の解約益で赤字決算を免れた」という綱渡り組の地銀も複数出現している。

 これらの銀行は、前年度決算の見栄えをよくすることはできたものの、売却や解約によって発生した多大なキャッシュの再運用先が見つからないという事態に陥りつつある。ある地銀は「短期の金融市場に資金を出して薄利を稼ぐのがせいいっぱい」と嘆くのである。

 金融庁の幹部は、こうした実情について「再運用先を考えたうえで保有有価証券を売却すべきである」と苦言を呈しているが、地銀業界から聞こえてくるのは「考えようにも運用先が見つからない」というボヤキである。

 マイナス金利政策の下で、有価証券運用まで含めた総資金利ザヤが逆ザヤという事態が地銀業界でヒタヒタと拡大している。「なすすべなし」というムードの強まりとともに、全国各地で日銀に対する怨嗟(えんさ)の声がいよいよ強まってきている。

    ◇    ◇

 金融業界を30年余にわたり取材してきた金融ジャーナリスト、浪川攻さんが「ここだけの話」をつづります。「ニッポン金融ウラの裏」は、原則として週1回の掲載です。

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浪川攻

浪川攻

金融ジャーナリスト

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌で記者として活躍。東洋経済新報社の契約記者を経て、2016年4月、フリーに。「金融自壊」(東洋経済新報社)など著書多数。

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