書斎で作品の構想を練る山崎豊子さん=堺市で2012年4月20日、竹内紀臣撮影
書斎で作品の構想を練る山崎豊子さん=堺市で2012年4月20日、竹内紀臣撮影

社会・カルチャーベストセラーを歩く

国民作家・山崎豊子が描いた「大義に殉じた男」の奥底

重里徹也 / 文芸評論家、聖徳大教授

 山崎豊子はきわめて魅力的な小説家だ。司馬遼太郎と並ぶ国民作家といってもいいだろう。

 国民作家とは、国民に広く愛されながら、民族の運命を描いた作家のことだ。山崎作品は刊行されるたびに多くの読者に迎えられ、繰り返し映像化されてきた。何千万人という日本人が山崎の物語に親しんできたことになる。

 その魅力の中心にあるのは、「剛腕のリアリズム」とでも呼びたい筆致だ。なじみやすいのに密度のある文章で、私たちを社会的広がりのある物語世界に連れていってくれる。

 そこであらわにされるのは、人間という動物の裸の姿だ。企業経営者、高級官僚、大学教授、元軍人、サラリ…

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重里徹也

重里徹也

文芸評論家、聖徳大教授

1957年、大阪市生まれ。大阪外国語大(現・大阪大外国語学部)ロシア語学科卒。82年、毎日新聞に入社。東京本社学芸部長、論説委員などを歴任。2015年春から聖徳大教授。著書に「文学館への旅」(毎日新聞社)、共著に「村上春樹で世界を読む」(祥伝社) などがある。