小学館ビルの入り口=東京都千代田区
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DeNA“盗用サイト”は小学館出資で生まれ変われるか

編集部

 出版大手の小学館とIT大手のDeNA(ディー・エヌ・エー)は8月3日、共同でプレスリリースを発表した。両社が合弁会社を設立し、DeNAが運営していた女性向けファッション情報サイト「MERY(メリー)」の名称を引き継いだ新たなサイトを年内をめどに開設するというものだ。

 MERYを含め、DeNAが運営していた10の情報サイトは昨年、他サイトからの写真や記事の盗用が指摘された。医療といった人の健康に関わる分野でも、間違った内容やいいかげんな記事が掲載されていることがわかり、10サイトはすべて閉鎖された。

 DeNAが設置した第三者委員会が調査を行い、盗用が疑われるコンテンツは、画像だけで最大74万個とされた。MERYなど10サイトを舞台に、最大級の著作権侵害が行われていた。これだけの問題を引き起こしたサイトの名前をなぜ、小学館とDeNAは再び使うのだろうか。

盗用問題で記者会見する守安功DeNA社長(左)と南場智子会長(肩書きは当時)=2016年12月7日、田中学撮影
盗用問題で記者会見する守安功DeNA社長(左)と南場智子会長(肩書きは当時)=2016年12月7日、田中学撮影

旧「MERY」の記事は一切使わない

 発表されたリリースを詳しく見てみよう。両社は8月8日に合弁会社「MERY」を設立する。資本金・資本準備金の合計額は6億5万円で、小学館が3分の2、DeNAが3分の1を出資する。

 合弁会社の社長には小学館の副社長が就任する。記事作成、編集、校閲などのノウハウが必要な業務は小学館が担当し、システム構築や広告営業といったマーケティングはDeNAが中心になる。さらに、新「MERY」では休止前の「MERY」の記事は一切使用しないこともリリースに記載された。

 旧「MERY」の記事を使わないのは当たり前のことだ。DeNAは旧「MERY」に掲載された大量の記事の一つ一つについて、実際の盗用の有無を検証していない。旧「MERY」の記事を使ったら、新たな著作権侵害が発生する可能性がある。

盗用問題を受け、全記事非公開となったファッション情報サイト「MERY」=2016年12月6日時点のキャプチャー
盗用問題を受け、全記事非公開となったファッション情報サイト「MERY」=2016年12月6日時点のキャプチャー

4月にデジタルメディアの新事業で協議開始

 両社に取材すると、今年4月に両社は新しいデジタルメディア事業について共同で検討を開始する基本合意をし、その後、協議を続けてきたという。

 なぜ「MERY」なのか、新たな名称にする選択肢もあったのではないか。小学館デジタル事業局はこうした疑問に対し、「(旧MERYは)20代の女性から圧倒的に支持された実績がある。抜本的に体制を改め、記事チェックのトレーニングも積み、全体を刷新すれば、また支持される可能性は十分ある」と説明する。

 DeNAの10サイトは、記事作成マニュアルをもとに記事や画像の盗用を繰り返し、アルバイトやインターンを使って極めて低コストでコンテンツを作成していた。旧MERYは月間約2000万人の閲覧者が訪れる人気サイトだった。だが、月5000本を上回る記事を粗製乱造したことで得られた“偽りの人気”だった。

 新しいサイトは、旧MERYと同様、20代前後の女性をターゲットとし、ファッションを中心に、女性が関心を持つ情報を掲載する方向になるという。「CanCam」「Oggi」といった人気女性ファッション雑誌で長年の実績のある小学館が編集面の責任を持てば、著作権違反といった問題は起きないだろうが、収益モデルを築けるかどうかは不透明だ。

小学館ビル=東京都千代田区
小学館ビル=東京都千代田区

合弁会社に小学館が4億円を出資

 小学館は1999年2月期決算で史上最高の売上高1668億円をあげた。その後下降線をたどり、06年2月期から16年2月期決算まで11年間売上高の減少が続いた。17年2月期決算は売上高973億円で前期比1.8%増と減少に歯止めをかけたものの、2年連続で最終(当期)赤字を計上した。長引く出版不況に苦しみ、新たな収益源の模索が続いている。

 小学館は合弁会社に約4億円を出す。小学館自体の資本金は1億4700万円で、それを大きく上回っており、この合弁会社に相当力が入っていることをうかがわせる。期待をかけた新MERYは再び女性たちに受け入れられるのだろうか。

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長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
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