新車の無資格検査問題で記者会見に臨む西川広人社長=2017年10月19日、小出洋平撮影
新車の無資格検査問題で記者会見に臨む西川広人社長=2017年10月19日、小出洋平撮影

政治・経済自動車不正リポート

「役員の責任は重い」係長との会合で弁明した日産社長

編集部

日産「問題発覚後も不正」(3)

 不正な検査が発覚した後も、その不正が続いていた日産自動車。同社の西川(さいかわ)広人社長が10月19日の記者会見で、工場の現場監督者である係長への徹底が不十分だったと説明した。これに対し、報道関係者から「現場に責任を押しつけようとしているのではないか」との疑問の声が相次いだ。報道関係者と西川社長とのやり取りを詳しく報告する。

「現場に責任は押しつけない」と社長

 西川社長の説明に対し、さっそく新聞記者が質問した。「係長と課長のコミュニケーションのギャップという現場レベルの話をされたが、そのすべてを統括する西川さんを含む経営陣の責任となると思う。西川さん自身の責任の取り方をどう考えるか」との内容だった。

日産の西川広人社長=2017年10月19日、小出洋平撮影
日産の西川広人社長=2017年10月19日、小出洋平撮影

 問題が現場レベルで起きたとしても、最終的には現場を管理・統括する経営陣の責任ではないのか、という問いかけである。

 これに対して西川氏は「現場に責任を押しつけることはまったく考えていない。ただ、法令で決まっていることに対する意識が薄いということで、法令順守の教育が必要だと思う。個人単位の処分の対象にはしたくないと思っていて、再教育で行きたいと思う」と述べた。

 そして、「現場が自律的に動くことが日本のものづくりの強さの源泉だと思う。ただし、現場任せの部分が強すぎてはいけない。現場に対するコントロールが非常に課題だと思っている」と付け加えた。

記者が「マネジメントこそ問題」と追及

 フリーの記者も次のように疑問を投げかけた。

 「課長と部長、部長と役員・社長とのコミュニケーションは何の問題もないと言い切れるのか。課長と係長との間だけが問題とは思えない。係長がやっていることをなぜ課長がわからないのか。課長の判断をなぜ部長がわからないか、役員が何を知らないか。そういうマネジメントこそが問題」

 この記者はさらに「現場をコントロールできなかったのが問題だというのは、マネジメントの責任を置いておいて、責任を係長と課長のところにフォーカスしているのではないか」と指摘し、問題は現場ではなく、経営陣の問題ではないかと追及した。

日産の西川広人社長=2017年10月19日、小出洋平撮影
日産の西川広人社長=2017年10月19日、小出洋平撮影

 これに対して西川社長は、「現場への徹底という点で見ると、そこ(課長と係長のコミュニケーション)の部分が一番抜けていたということであって、そこに責任を押し付けることはまったく考えていない」と繰り返した。「課長と係長との間の責任ということではなくて、そこまでフォローしきれなかったことが問題である、当事者に責任があるのではなく、我々に責任があると思っている」と、改めて責任は自分たちにあると強調した。

係長12人が参加した意見交換会

 この記者会見での西川社長の発言に対して、社内の一部からも反発の声が上がった。不正の原因に関する説明として「係長」が名指しされたからである。これを踏まえ、記者会見の2日後の10月21日の土曜日。日産自動車の追浜工場(神奈川県横須賀市)で製造現場を指揮する係長らと経営陣との意見交換会が開かれた。

日産の追浜工場=神奈川県横須賀市で2017年10月20日撮影
日産の追浜工場=神奈川県横須賀市で2017年10月20日撮影

 日産の国内工場に、課長が90人、係長が230人いる。意見交換会には、このうち係長12人が製造現場の代表として参加した。その場で西川社長は「現場を担う従業員に責任を負わせる考えはない」「むしろ役員や管理職の責任のほうが重い」と話し、現場に責任を押しつける趣旨ではなかったと弁明に追われたのである。

 日産は25日、再検査が必要となった3万8650台の追加リコールを国土交通省に届け出た。無資格検査については、社外の弁護士など第三者を含めた社内調査が行われている。不正排除を徹底できなかった原因はどこにあると結論づけるのだろうか。

 <日産「問題発覚後も不正」は今回で終わります。日産自動車、神戸製鋼の不正については随時、掲載します>

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長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
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