思い邪なし

思い邪なし26 泣くよかひっ飛べ(五)

北康利 / 作家

第一章 勝ちに見放されたガキ大将

泣くよかひっ飛べ(五)

 鹿児島県は温泉の数が北海道よりも多く、大分県に次いで全国二位を誇る。温泉は稲盛家にとっても身近なものだった。

 行くのは決まって河頭(こがしら)温泉。畩市(けさいち)の故郷である小山田にあり、島津斉彬が開いたとされる由緒ある湯治場だ。

 畩市が「こがしら」と口に出すと子どもたちは歓声をあげた。旅館に着くと必ずスキヤキが出たからで、これが稲盛家最大の贅沢(ぜいたく)だった。

 稲盛は後年、吉野家の牛丼を好物とし、有楽町店にしばしば出没したが、稲盛家は肉の好きな家系のようだ。…

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北康利

北康利

作家

1960年生まれ。東大法学部卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長などを経て、2008年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。著書に「白洲次郎 占領を背負った男」、「吉田茂 ポピュリズムに背を向けて」など。

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