思い邪なし

思い邪なし40 最初の受験失敗(三)

北康利 / 作家

第一章 勝ちに見放されたガキ大将

最初の受験失敗(三)

 日当たりがよくて風通しのよい八畳間があてがわれ、食事も特別に栄養のあるものを食べさせてもらったが、病状は一進一退。受験が目前に迫っているだけに心は焦った。

 そんなある日、いつものように青白い顔をして横になっていると、隣家の奥さんが庭の向こうの生け垣越しに心配して声をかけてきてくれた。

 林田(はやしだ)バスの運転手をしていた長野さんという方の奥さんである。若くてきれいで優しい人で、稲…

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北康利

北康利

作家

1960年生まれ。東大法学部卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長などを経て、2008年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。著書に「白洲次郎 占領を背負った男」、「吉田茂 ポピュリズムに背を向けて」など。