記者会見場を後にする日産の西川広人社長=2017年11月17日、和田大典撮影
記者会見場を後にする日産の西川広人社長=2017年11月17日、和田大典撮影

政治・経済自動車不正リポート

「無資格検査やめ!」が日産工場に徹底しなかった理由

編集部

無資格検査の“最終報告”(7)

 日産自動車の無資格検査問題が迷走したのは、西川(さいかわ)広人社長が「すべての工場でやめた」と発表した後も無資格検査が続いていたことが大きい。その結果、日産は2度目のリコール(回収・無償修理)に追い込まれた。日産が11月17日に公表した“最終報告”では、無資格検査が続いていた原因をどう分析しているのか。

 日産は9月19日に全工場に「完成検査員以外は完成検査をしてはならない」と指示した。“最終報告”はその後も無資格検査が続いていた原因を、工場ごとに記述している。

記者会見で頭を下げる日産の西川広人社長=2017年11月17日、和田大典撮影
記者会見で頭を下げる日産の西川広人社長=2017年11月17日、和田大典撮影

どの作業が完成検査かわからない作業員も

 日産車体湘南工場では、ハンドルを左右に切った際の角度を確認する完成検査である「ハンドル切角検査」を、もともと一般の従業員が行っていた。ハンドルを動かすと、機械が自動的に測定する。

 同工場には二つの完成検査ラインがあり、1人の完成検査員が両ラインのハンドル切角検査とヘッドランプ検査をしていた。その検査が遅れることがあり、ラインが詰まらないよう一般作業員がハンドル切角検査を行うことがあったという。

 会社から「中止」の指示があったが、10月11日まで一般作業員のハンドル切角検査が続いていた。完成検査員は「機械で自動的に判定される検査工程なので、スキルもいらず問題ないと考えた」と説明している。一般作業員のなかには、自分が完成検査をしてはいけないことは理解したが、どの作業が完成検査なのかがわかっていない者もいたという。

補助検査員が自発的に完成検査

 追浜工場では、完成検査のうちの二つの項目で、補助検査員が担当する場合は完成検査員の付き添いが必要であることが理解されていなかった。そして、10月11日まで補助検査員が1人で完成検査をしていた。

日産自動車追浜工場=2011年7月2日、小林努撮影
日産自動車追浜工場=2011年7月2日、小林努撮影

 栃木工場や日産九州工場では、完成検査ラインとは別の場所で行われていた検査の一部を一般作業員が担当しており、9月19日の会社指示の後も1カ月間続いていた。

 日産車体九州工場では、会社の指示で完成検査業務から車両運搬や調整業務に回された補助検査員が、車両運搬後に自発的に完成検査を行い、数日後に指導検査員が見つけてやめさせたケースがあった。

ラインを止めて再点検しておけば……

 以上の記述を見ると、多くの工場で、完成検査かそうでないかが明確でない部分があったことがわかる。このため、会社が「完成検査員以外は完成検査をしてはならない」と指示しただけでは、すぐに徹底できなかったとみられる。

日産自動車九州の工場
日産自動車九州の工場

 西川社長は、11月17日の記者会見で、「現場で何十年も行われていたことの把握や認識が甘かった。今になってみれば、工場を止めても確認や対策を徹底すべきだったと思う」と振り返った。

 生産部門の最高責任者の山内康裕チーフ・コンペティティブ・オフィサー(CCO)も「ラインを完全に止めておけば、全員に対して『大変な事態』というメッセージがきちんと伝わって再発しなかったと思う。その判断を間違えた」と反省の弁を述べた。

 西川社長は当初、「課長と係長との間のコミュニケーションのギャップが非常に大きく、ここに一つの落とし穴があったのではないか」と指摘していた。しかし、最終報告で、構造的な問題があることがはっきりしたのである。

 <次回「「現場と経営者との距離」ゴーン氏はいま何を考える?」>

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長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
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