思い邪なし

思い邪なし61 フォルステライト合成成功(二)

北康利 / 作家

第二章 京セラ設立

フォルステライト合成成功(二)

 稲盛の強みは人並み外れた集中力だ。何度も繰り返し実験を行い、やがて彼の前にフォルステライト磁器の輪郭が浮かび上がってくる。だがそこから先が容易ではなかった。

 酸化マグネシウムと滑石(タルク)の粉末を混ぜ、これに焼結助剤として硼珪(ほうけい)酸ガラスを足せばフォルステライト材料の合成が可能なはずだというところまでは解明したが、ここで行き詰まったのだ。

 パサパサの粉末同士を何でつなぎ合わせればいいかが分からない。伝統的な陶器の世界では粘土をつなぎに使…

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北康利

北康利

作家

1960年生まれ。東大法学部卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長などを経て、2008年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。著書に「白洲次郎 占領を背負った男」、「吉田茂 ポピュリズムに背を向けて」など。