思い邪なし

思い邪なし71 一回目の辞職願(二)

北康利 / 作家

第二章 京セラ設立

一回目の辞職願(二)

 時は少しさかのぼるが、ある時、第一物産の紹介で、パキスタンから碍子(がいし)会社の御曹司が松風工業へ視察にやってきた。ちょうどその時、稲盛はU字ケルシマ大量生産のための電気焼成トンネル炉を設計し、京都にあった東海高熱工業に頼んで作ってもらっていたところだった。これまではいわゆるバッチ炉と呼ばれる、焼くものを入れて蓋(ふた)をし、焼き終わったら取り出すという単純な炉だったが、稲盛が設計したのは、焼くものを炉に入れると、ベルトが動いてトンネル内を移動させながら焼いていく画期的なものだ。

 パキスタン人はそれを見て一目で気に入ってしまった。改良すれば碍子の大量生産も可能だ。そこで東海高熱…

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北康利

北康利

作家

1960年生まれ。東大法学部卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長などを経て、2008年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。著書に「白洲次郎 占領を背負った男」、「吉田茂 ポピュリズムに背を向けて」など。