東京都渋谷区のコインチェックが入るビル
東京都渋谷区のコインチェックが入るビル

政治・経済ビットコイン狂騒曲

仮想通貨がハッカーに狙われる“一瞬のリスク”とは

平野純一 / 経済プレミア編集部

 仮想通貨取引所大手の「コインチェック」(東京都渋谷区)から1月26日、26万人分、580億円相当の仮想通貨NEM(ネム)が不正アクセスによって流出した。海外からのハッキングによるものとみられている。

 このニュースは世界を駆け巡り、代表的な仮想通貨ビットコインも1月25日の1万1259ドル(約122万7000円)から同31日には一時1万ドルを割って9777ドルをつける場面もあり13%程度下落した。仮想通貨の信頼を揺るがしかねない事態に発展している。

「コールド」から「ホット」に移す時が危ない

 コインチェックがハッキングを許した背景に、セキュリティーの甘さが指摘されている。

 顧客の仮想通貨を保管する際、ハッキングなどから守るためにインターネットから遮断した状態で保管することを「コールドウォレット」といい、逆にインターネットにつながった状態のことを「ホットウォレット」という。今回盗まれたコインチェックのNEMはネットにつながったままの「ホットウォレット」にあったことが大きな原因と言われている。

 顧客の口座の仮想通貨は「コールドウォレット」に保管しておくのが一般的だ。だが、仮想通貨を100%「コールドウォレット」で保管すれば安心かといえば、必ずしもそういうわけではない。

記者会見するコインチェックの和田晃一良社長(左)と大塚雄介取締役(東京都中央区で2018年1月27日午前0時33分、手塚耕一郎撮影)
記者会見するコインチェックの和田晃一良社長(左)と大塚雄介取締役(東京都中央区で2018年1月27日午前0時33分、手塚耕一郎撮影)

 取引所では日々、顧客の送金や売買がある。取引を行うにはインターネットにつながなければならない。つまり「コールド」から「ホット」に移すことになる。関係者によると「コールドからホットに移す瞬間が実は狙われやすく最も危ない」のだという。

 コールドに置いている間はハッカーなどからの攻撃を受けないが、逆に仮想通貨そのものは“無防備”な状態でもある。きちんとした防御策が施されずにホットに移してネットにさらされた時が一番危ないということなのだ。

 しかも、取引のたびに移すのでは煩雑な作業が発生するため現実的でもない。業界最大手のビットフライヤーの場合、約80%の仮想通貨をコールドで保管し、残りをホットで保管している。「ネットにさらした『ホット』状態のコインはシステムを強固にして厳重に守り、それ以外のコインは『コールド』にして守る。使い分けが重要」と同社の金光碧CFO(最高財務責任者)は話す。

2月13日までに金融庁に報告

 仮想通貨はブロックチェーンと呼ばれる管理者がいないオープンなシステムによって成り立っているが、逆にこのシステムは、全取引がオープンな形で記録に残り、不正アクセスによって送金されたNEMのアドレスも追跡することが可能だ。

コインチェックが入るビルの1階には「ご用の皆様へ」の紙が
コインチェックが入るビルの1階には「ご用の皆様へ」の紙が

 ハッカーは不正アクセスによって得たNEMを1月26日に複数のアドレスに移して、追跡から逃れようとしたようだが、30日にはさらに別のアドレスに送金して追跡をより困難にさせようとする動きが見られたという。NEMの普及を推進する国際団体「ネム財団」もこの動きを注視している。

 事件発覚後、口座を持つ人たちも多数押し寄せたコインチェックの本社は東京都渋谷区の複合ビル3階にある。1階には「コインチェック株式会社にご用の皆様へ」と題した貼り紙があり、「3階弊社オフィスにおける個別の対応が困難な状況のため、ご用の方は下記でお問い合わせをお願いいたします」として、メールアドレスや電話番号が記してある。

 金融庁は1月29日、コインチェックに対し異例の早さで業務改善命令を出した。今回の事件の原因の究明、顧客への適切な対応、リスク管理や経営管理の強化と責任の所在の明確化--などを早急に行い、2月13日までに書面で報告を求めた。同社は「今回の措置を厳粛に受け止め、早期に原因究明、再発防止策などの策定を進めていく」としているが、どのような対応策を出すのかに仮想通貨への信頼もかかっている。

ビットコイン狂騒曲は随時、掲載します>

経済プレミア最新記事へ

「ビットコイン40%急落」買いの好機か暴落の始まりか

「上場初日80億円」ビットコイン先物は様子見ムード

「新通貨バブル」のビットコイン 崩壊のきっかけは?

ビットコインゴールド「新たな通貨かもうけの種か」

ビットコイン30%急落の要因に「分裂中止」の余波

平野純一

平野純一

経済プレミア編集部

1962年生まれ。87年毎日新聞社入社。盛岡支局、サンデー毎日編集部、経済部、エコノミスト編集部などを経て2016年から現職。金融、為替、証券、マクロ経済などを中心に取材。

イチ押しコラム

知ってトクするモバイルライフ
手のひらにしっかり収まる「アクオスR2コンパクト」。発売は1月

日本人の好みに応えたシャープ・アクオス小型スマホ

 シャープが、小型スマホの「アクオスR2コンパクト」を開発。ソフトバンクから2019年1月に発売されるほか、SIMフリーモデルとし…

ニッポン金融ウラの裏

NISAに最初の「5年満期」更新しないと非課税消滅

 少額投資非課税制度(NISA)が初めての期間満了を迎える。一定の手続きによって、さらに5年間の非課税期間延長となるが、いま、証券…

藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」
地下化されたワルシャワ中央駅上の広場。スターリン建築と民主化後のビルが林立する(写真は筆者撮影)

西に移動させられた国ポーランド 首都ワルシャワの今

 ◇ポーランド・ワルシャワ編(1) 36年前、高校の文化祭のディベートで、「史上最大の英雄は誰か」というお題に、「ポーランドで共産…

メディア万華鏡
週刊文春11月1日号

メディア騒がすドタキャン沢田研二の「格好いい老後」

 騒ぎ過ぎじゃないか。取り上げ方の息もなんだか長い。ジュリーこと沢田研二さん(70)が、10月17日にさいたまスーパーアリーナで予…

職場のトラブルどう防ぐ?

「部下の夫から連日クレーム」42歳女性上司の困惑

 A美さん(42)は、夫が院長を務めるクリニックの事務長を務めています。2カ月前から経理担当として働いているB子さん(33)の夫か…