月刊・料理王国2月号の表紙
月刊・料理王国2月号の表紙

社会・カルチャーメディア万華鏡

「料理家やモデルも2世ブーム」社会格差は拡大するか

山田道子 / 毎日新聞紙面審査委員

 食の専門誌、月刊・料理王国2月号の表紙を見て「へ~」と思った。「『食』の継承者たち」という見出し。それに、予約の取れないことで知られるレストラン「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」の落合務・剛さん親子、テレビ番組「料理の鉄人」で有名となった「ラ・ロシェル」シェフの坂井宏行さんと慎吾さん親子の4人の写真が表紙にドンと載っている。少々セレブのような感じの扱い。

 坂井さん親子の場合、料理人の父を息子の慎吾さんがサカイ食品社長として経営面で支えている。落合剛さんは「ダ・オチアイ」の取締役総支配人としてホールに立っているという。記事で、坂井慎吾さんは「(父は)何があってもポジティブで、元気さと明るさだけは失わない」、落合剛さんは「尊敬する父が開く店に迷わず入りたいと思いました」と語っている。

 江戸時代から続く老舗料理屋では世襲は当たり前だろうが、こちらはイタリアンとフレンチ。食の世界でも2世ブームがここまで来たかと驚いた。

月刊・料理王国2月号より
月刊・料理王国2月号より

女性誌で特集された「2世モデル特集」

 女性ファッションサイトのELLEオンラインは「2018年最注目! “ミレニアルズ”を超える、アンダー20歳の2世ガールズ」を特集。1990年代に一世を風靡(ふうび)したスーパーモデルの2世モデルら30人を特集している。朝日新聞の6日朝刊に「政治学者・五百旗頭薫氏が見た国会」という記事が載っていた。略歴に「父は五百旗頭真・前防衛大学校長」とあり、こう書かれるのはどんな気持ちなのかと考えてしまった。

 2世、世襲と言えば断トツが政治の世界だろう。昨年の総選挙後に毎日新聞(10月24日朝刊)がまとめたところによると、父母などが国会議員だった世襲当選者は120人で全体の25・8%。なんと4人に1人。自民党に限ると、当選者に占める世襲の割合は33・8%。自民党の世襲候補は103人だったが、落選は7人だけだった。そのうち歌舞伎界みたいになっちゃうんじゃないか。

 精神科医の香山リカさんが著書「がちナショナリズム」(ちくま新書)の中で次のようなことを書いている。父と息子が支配したりされたり、憎しみあったりという漫画「巨人の星」的な親子関係が薄れ、40代前半以下の若い世代は屈託なく父親の偉大さを認め、素直にその後に従い、同じ道を進む、と。

 香山さんは、小泉純一郎元首相(ちなみに3世)の次男・進次郎衆院議員を例にあげ、「屈託のない2世たち」が急激に増加しているとともに「2世タレントに2世社員? いいんじゃないの?」とすんなり若者が肯定するようになってきていると指摘する。

小泉純一郎元首相の講演会であいさつを終え、席に戻る小泉進次郎氏(左)=2008年9月27日、小出洋平撮影
小泉純一郎元首相の講演会であいさつを終え、席に戻る小泉進次郎氏(左)=2008年9月27日、小出洋平撮影

2世にだって職業選択の自由はあるが…

 2世議員も選挙というみそぎを受けていると言えるし、2世にだって職業選択の自由はある。2世であることを責めているわけではない。でもこの2世ブームは社会の格差を固定、拡大することにつながると思う。

 「2世が社会で広く認められるとなれば、生まれた時からのチャンスの大小もほぼ決定されていることになる。すると“生まれ”によって格差がつくという日本が最も望まない社会に、どんどん、近づいていくことになるのではないか」と香山さんは記している。

 1月29日発売の週刊現代(講談社)のトップは「『新・階級社会』 日本の不都合な真実」。「『階級』は固定化し、孫の代まで引き継がれる」という記事によると、富裕層の子供が金持ちになる傾向は極めて強く、その大きな要因が教育。富裕層の子息は優れた教育を受け、同じような階級の学友に恵まれ、その後も経済的な成功を収める。孫の代までこうした傾向は続くという。

週刊現代の記事
週刊現代の記事

 講談社から出版された「新・日本の階級社会」の著者、橋本健二・早稲田大教授はこの記事で、アンダークラス(非正規労働者)の半数が将来の生活に「とても不安」を感じており、仮に子供に恵まれたとして、その教育にカネを回すことはできないと指摘。その結果、社会は殺伐としたものになっていくと予測している。「階級」間移動ができるような手を打たないと「2世ブーム」は社会を変えてしまうかもしれない。

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山田道子

山田道子

毎日新聞紙面審査委員

1961年東京都生まれ。85年毎日新聞入社。浦和支局(現さいたま支局)を経て社会部、政治部、川崎支局長など。2008年に総合週刊誌では日本で一番歴史のあるサンデー毎日の編集長に就任。総合週刊誌では初の女性編集長を3年半務めた。その後、夕刊編集部長、世論調査室長を経て15年5月から現職。

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