福島第1原発の廃炉作業用に開発され、報道公開された除染装置のデモンストレーション=東芝横浜事業所磯子で2013年2月15日、宮間俊樹撮影
福島第1原発の廃炉作業用に開発され、報道公開された除染装置のデモンストレーション=東芝横浜事業所磯子で2013年2月15日、宮間俊樹撮影

政治・経済東芝問題リポート

「売上高構成比たった3%」東芝原子力事業の行方は?

編集部

車谷氏の東芝CEO就任(4)

 東芝の会長兼最高経営責任者(CEO)に就任する車谷暢昭・元三井住友銀行副頭取(60)が、東芝の再建に向けて直面する課題の一つに、原子力事業をどうするか、という問題がある。

 子会社だった米原子力大手、ウェスチングハウスは経営破綻して東芝から切り離された。このため今の東芝の原子力事業の中心は国内であり、東日本大震災で事故を起こした福島第1原発をはじめとする廃炉事業、それに既存原発の維持・補修が中心だ。

東芝の子会社だったウェスチングハウスが建設していたボーグル原発=2016年5月、清水憲司撮影
東芝の子会社だったウェスチングハウスが建設していたボーグル原発=2016年5月、清水憲司撮影

 2月14日に公表された東芝の2017年4~12月期決算の売上高は約2兆8000億円。このうち原子力を含むエネルギー部門の売上高は約6000億円だ。内訳は火力・水力発電2600億円、送変電・配電等が2000億円。原子力事業は917億円で、全売上高の3%余りに過ぎない。ちなみに原子力事業の営業損益は89億円の赤字だ。

 原子力事業の売上高の規模は小さく、しかも福島第1原発事故以降は、原発の新設が難しくなった。利益を期待できにくくなっていることから、ここ数年、日立製作所や三菱重工業など原子力事業を行っている企業との再編が取りざたされてきた。

くすぶる原子力事業の再編問題

 実際、経済同友会代表幹事であり、東芝の社外取締役を務める小林喜光・三菱ケミカルホールディングス会長は、17年3月に行われた東芝臨時株主総会で、次のように語っていた。

 「私はエネルギー需要が減り、自然エネルギーに転換していく社会のなかで、東京電力の福島原発事故を契機に、原子力事業は縮小していくと思っている。原子力事業に携わる日立製作所、三菱重工業、東芝の3社で共同持ち株会社を作って、共同で運営していかなければいけないと考えていた」

経済産業省=2014年8月29日、瀬尾忠義撮影
経済産業省=2014年8月29日、瀬尾忠義撮影

 このときの東芝の臨時株主総会は、ウェスチングハウスの経営破綻で生じた巨額損失の穴埋めに、半導体メモリー事業を売却することを株主から承認を得るために開かれた。小林氏が述べた原子力事業の共同持ち株会社の構想は進展していないが、再燃する可能性は十分ある。もし構想が動くとすると、その中心は東芝というより、原子力行政をつかさどる経済産業省だ。

車谷氏と原子力事業との関わり

 車谷氏の東芝会長兼CEO就任は、原子力事業の再編問題と無縁ではない。今回の就任を報じた新聞各紙は、車谷氏について「原子力事業に通じた」という紹介の仕方をした。車谷氏は銀行時代、経営企画担当が長く、原子力事業に詳しいことはない。それなのに、新聞はどうしてこのような書き方をしたのか。

 福島第1原発事故後、東京電力が事故の賠償や廃炉費用などで事実上、経営破綻して国有化された際に、その資金繰りを銀行が支援した。車谷氏は三井住友銀行の企画担当役員として、その枠組みの取りまとめに奔走した。

 車谷氏は財務省や金融庁といった役所との関係はもともと深かったが、経産省とのつながり、人脈もさらに深まったとみられる。車谷氏の東芝会長兼CEO就任に、経産省の意向が働いたとみられている。

東芝の会長兼CEO就任が決まり、記者会見する元三井住友銀行副頭取の車谷暢昭氏(右)=2018年2月14日、小川昌宏撮影
東芝の会長兼CEO就任が決まり、記者会見する元三井住友銀行副頭取の車谷暢昭氏(右)=2018年2月14日、小川昌宏撮影

記者会見では慎重な言い回しに終始

 車谷氏は2月14日に東芝本社で開かれた記者会見で、「原子力事業についてはさまざまな選択肢、問題点がある。外部の立場として一定の認識はある。今後は内部に入ってしっかり対応したい。どういう選択肢がいいのか、今後検討する」と慎重な言い回しに終始した。

 <次回「東芝が実施した6000億円増資は「規定すれすれ」」>

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長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
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