社会・カルチャーベストセラーを歩く

「おらおらでひとりいぐも」読者を静かに力づける一冊

重里徹也 / 文芸評論家、聖徳大教授

 平日の午後。東京都内の街には、高齢の男女があふれている。公立図書館、カフェ店、公園のベンチ、病院の待合室、ショッピングセンターの無料休憩所。彼らを見ながら、余計なお世話だが、毎日一体、どんなことを考えているのだろうと思うことがある。

 もちろん、そんな光景を眺めている私も、「街の老人」予備軍だ。大学へ行かない日など、家の近辺を散歩し(他人から見れば、さまよい歩いているように見えるだろう)、喫茶店や図書館で本を読み、また、散歩し、スマホの歩数計が1万歩を超えたら帰宅する。それは少し寂しいが、充実した時間でもある。

 芥川賞を受賞した若竹千佐子の「おらおらでひとりいぐも」(河出書房新社)の主人公「桃子さん」は74歳…

この記事は有料記事です。

残り1517文字(全文1825文字)

重里徹也

重里徹也

文芸評論家、聖徳大教授

1957年、大阪市生まれ。大阪外国語大(現・大阪大外国語学部)ロシア語学科卒。82年、毎日新聞に入社。東京本社学芸部長、論説委員などを歴任。2015年春から聖徳大教授。著書に「文学館への旅」(毎日新聞社)、共著に「村上春樹で世界を読む」(祥伝社) などがある。

イチ押しコラム

知ってトクするモバイルライフ
iPhone XS、XSマックスと同じく9月21日に発売されたアップルウオッチ「シリーズ4」

アップルウオッチ4「大画面で薄く進化」緊急通報も

 アップルウオッチの4世代目となる「シリーズ4」が9月21日、iPhone XS、XSマックスと同時に発売された。「シリーズ3」か…

職場のトラブルどう防ぐ?

パートの休憩問題で「労基署から指導」管理部長の窮地

 A雄さん(48)は、従業員数約230人の食品スーパーの管理部長です。ある店舗のパート従業員の休憩時間について労働基準監督署から是…

ニッポン金融ウラの裏
東京証券取引所=2015年5月8日、関口純撮影

日本の取引所の国際競争力が高まらないウラ事情

 わが国の資本市場をめぐっては解決が先送りされたままに置かれている課題が少なくない。そのひとつが証券取引所の「国際競争力」である。…

藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」
バルパライソ港を見下ろす丘の一つで、画家が絵を売っていた(写真は筆者撮影)

世界遺産バルパライソ 斜面に広がる明るい港町に感激

 ◇チリ・サンティアゴとバルパライソ編(3) 高校時代だっただろうか。何かの本で写真を見てから、いつか行きたいと思っていた。真っ青…

メディア万華鏡
韓国旅客船セウォル号の沈没事故を報じる2014年4月17日付の毎日新聞東京朝刊

日本で「モリカケ映画」は? 米韓映画人が見せる底力

 「世の中が変わった時に真実が明かせるようにこの映画を作りました」。304人の死者・行方不明者を出した2014年の韓国旅客船セウォ…