社会・カルチャーベストセラーを歩く

「おらおらでひとりいぐも」読者を静かに力づける一冊

重里徹也 / 文芸評論家、聖徳大教授

 平日の午後。東京都内の街には、高齢の男女があふれている。公立図書館、カフェ店、公園のベンチ、病院の待合室、ショッピングセンターの無料休憩所。彼らを見ながら、余計なお世話だが、毎日一体、どんなことを考えているのだろうと思うことがある。

 もちろん、そんな光景を眺めている私も、「街の老人」予備軍だ。大学へ行かない日など、家の近辺を散歩し(他人から見れば、さまよい歩いているように見えるだろう)、喫茶店や図書館で本を読み、また、散歩し、スマホの歩数計が1万歩を超えたら帰宅する。それは少し寂しいが、充実した時間でもある。

 芥川賞を受賞した若竹千佐子の「おらおらでひとりいぐも」(河出書房新社)の主人公「桃子さん」は74歳…

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重里徹也

重里徹也

文芸評論家、聖徳大教授

1957年、大阪市生まれ。大阪外国語大(現・大阪大外国語学部)ロシア語学科卒。82年、毎日新聞に入社。東京本社学芸部長、論説委員などを歴任。2015年春から聖徳大教授。著書に「文学館への旅」(毎日新聞社)、共著に「村上春樹で世界を読む」(祥伝社) などがある。

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