くらし高齢化時代の相続税対策

72歳男性が脳梗塞で倒れて考え始めた「終活」

広田龍介 / 税理士

 川崎市に住むSさん(72)。7年前に妻を亡くしてからは、天涯孤独の一人住まいの生活を送っている。

 親から相続で取得した不動産からの収入があり生活には困っていない。ただ、相続人はいない。2年前、築40年のアパートを建て替えるか、売却するかで迷ったが、結局売却に踏み切った。その時手にした7000万円は証券会社に運用を任せている。

アパート経営はやめて現金化

 アパートの売却を決断したのは、最近は退出者が出ると、すぐに次の入居者が決まらずに空室の期間が長くなることもあり、家賃収入で部屋の内装修繕工事などの費用を回収することが次第に困難になってきたからだ。高齢になり、賃貸管理もだんだん面倒になってきた。建て替えるとしても、後継者がいなければ残しても仕方がない。

 残っている不動産は貸地だけとなった。年間400万円くらいの収入になる。貸地は手間がかからない。維持管理費用は固定資産税の約80万円で地代は借地人が振り込んでくれるか持参してくれる。

 そのSさんが、1カ月ほど前に軽い脳梗塞(こうそく)で2週間ほど入院生活を行った。手足の自由が利かなくなり、しびれを感じて、動くことができなかった。どうにか携帯電話で、亡くなった妻のおいに連絡し、状況を察したおいがすぐに救急車を手配してくれたため大事には至らなかった。

 ちょうど、今年の確定申告の準備をしている最中での出来事だった。公的年金の源泉徴収票や社会保険料の領収書、生命保険の支払証明書や医療費の領収書などを準備している時だった。

財産は命の恩人に譲りたい

 病院でリハビリを受け、ゆっくりでも歩けるように回復したが、言葉はまだハッキリと話すことができない。話をしても、周りの人には聞きにくいようで何度も聞き返されるような状態だ。

 今回の出来事で、Sさんは健康状態に自信がなくなってしまった。食事は近くのコンビニやスーパーで買い物してきたが、それもいつまで続けられるか心配になってきた。

 自分に万が一の時は財産は国有財産になってしまう。妻のおいは命の恩人と感じているので、財産はすべて彼に渡したいと考えている。そのためには遺言書を作成しなければならない。

 万が一に備えて、施設への入居を視野に入れながら、貸地を全部処分して現金化しておくことがいいのかもしれないと「終活」を考え始めている。

 <「高齢化時代の相続税対策」は毎週日曜日に掲載します>

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広田龍介

広田龍介

税理士

1952年、福島県いわき市生まれ。85年税理士登録。東京・赤坂で広田龍介税理士事務所を開設。法人・個人の確定申告、相続税申告、不動産の有効活用などを中心に幅広くコンサルティング活動を続けている。相続税に関する講演やセミナーも開催している。

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