思い邪なし

思い邪なし100 満を持しての社長就任(二)

北康利 / 作家

第三章 世界を見据えて

満を持しての社長就任(二)

 稲盛は財務についてもいつもと同じ考え方で臨んだ。“原理原則で考える”ということである。すると素朴な疑問が出てくる。

 経理部長の斎藤明夫は旧制神戸商大卒で、戦前すでに上場企業の経理を担当していた経理のプロだったが、その彼を稲盛はよく質問攻めにした。

 「売上げが上がって利益も出ているのにあなたは現金がないと言う。儲(もう)かったお金はどこにいったんですか?」

 「それは一言では言えません。形を変えて設備になったり、在庫になったり、売掛金になったりしています。…

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北康利

北康利

作家

1960年生まれ。東大法学部卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長などを経て、2008年みずほ証券を退職し、本格的に作家活動に入る。著書に「白洲次郎 占領を背負った男」、「吉田茂 ポピュリズムに背を向けて」など。