対談イベント「企業不正と第三者報告書」ゲストの久保利英明弁護士
対談イベント「企業不正と第三者報告書」ゲストの久保利英明弁護士

政治・経済日産、神戸製鋼は何を間違えたのか

<企業不正>「実態なき第三者委員会」どう見分けるか

編集部

イベント「企業不正と第三者報告書」(4)

 企業危機管理の第一人者、久保利英明弁護士と今沢真・経済プレミア編集長との対談イベント「企業不正と第三者報告書~日産、神鋼の不祥事に何を学ぶか」は、対談の後に参加者との質疑応答を行った。詳報の4回目をお届けする。

現場の孤立を感じた二つのケース

 参加者の一人は、「今沢編集長が、『不正が行われた企業の現場は孤立していると感じた』と総括したが、どういうことなのか詳しく聞きたい」と尋ねた。これに対して今沢編集長は東レ子会社と、三菱マテリアル子会社のケースを取り上げた。

 今沢編集長は「東レ子会社では、過去2代の品質保証室長が検査データを改ざんしていた。品質保証室は、組織上、社長直轄になっていたが、実際には社長と品質保証室長との接点はゼロ。検査設備が古く、検査データの正確さが疑われることもあったが、設備を更新する話もなかった」と説明した。

 データ改ざんが行われた三菱マテリアルの子会社では、他社から受注を奪ったのに、生産した製品には規格のバラツキが出てしまった。「お金をかけて最新設備を導入すれば良い物が作れたとは思うが、設備投資の話にはならず、データ改ざんに走った」と今沢編集長は指摘し、「現場と経営との距離が遠い」と述べた。

イベント参加者の質問に答える久保利英明弁護士(右)と今沢真・経済プレミア編集長
イベント参加者の質問に答える久保利英明弁護士(右)と今沢真・経済プレミア編集長

「過剰に高い品質が求められていたか」

 この参加者は、「製品のバラツキは技術上、ある程度は出ることがある。高い安全性を求めた結果、過剰な品質がメーカーに要求されていたことはないか」との疑問を述べた。

 これに対して久保利弁護士は、「一連の不正で問題だと思うのは、取り決めた基準が高いから、その基準から多少外れても事故は起きないし、安全だという説明がされていることだ。これは過信だと思う。自動車や機械は何年使われるかわからない。そういうなかで何があっても大丈夫な素材を選んでいるということ。それを『過剰品質』とは言えない」と回答した。

報告書を真剣に読むと良しあしがわかる

 続いて別の参加者が質問した。「久保利弁護士は、名ばかりで実態のない第三者調査委員会や報告書の問題点を取り上げられたが、私たちはどう見分けたらいいか。何か見分け方は?」

久保利英明弁護士
久保利英明弁護士

 久保利弁護士は、「第三者報告書に、トップや社外取締役、監査役がどう考えてどう動いたのか、内部統制システムは機能したのかということがきちんと書かれていなければダメだと思う」と述べ、日産自動車の無資格検査の報告書を例として取り上げた。

 日産の報告書では、長年、同社のトップを務めてきたカルロス・ゴーン会長が無資格検査を知らなかったと認定した。だが、無資格検査が発覚した後にゴーン会長がどう考え、どんな対応をしたのか、あるいは対応しなかったのかといったことが一切書かれておらず、報告書としては問題だったと指摘した。

 さらに、「第三者委員会報告書を真剣に読むと、良しあしが必ずわかる。あんな面白い読み物はない。皆さんが真剣に読んでご自身で判断していただくことが大事だ」と呼びかけた。

 <次回「企業不正の重大性を認識できない経営者の“鈍感さ”」>

経済プレミア最新記事へ

【第1回「企業不正」名ばかり第三者委員会では惨状は直らない

【第2回<企業不正>久保利弁護士「公表が信頼回復の早道だ」

【第3回<企業不正>第三者委員会の成否は経営者の度量次第

「日産、神戸製鋼は何を間違えたのか」出版

 日産自動車、神戸製鋼所、スバル、三菱マテリアル、東レと相次いで発覚した不正を、経済プレミアは詳しく報告してきました。その記事に大幅に加筆して「日産、神戸製鋼は何を間違えたのか」(毎日新聞出版、税込み1080円)を出版しました。

 筆者は今沢真・経済プレミア編集長兼論説委員です。書店やアマゾンなど通信販売でお求めください。

日産、神戸製鋼は何を間違えたのか」目次

第1章 発覚! 日産の無資格検査

第2章 社長謝罪後も続いていた不正

第3章 日産の“失われなかった20年”

第4章 無資格検査の“最終報告”

第5章 カルロス・ゴーン会長はどこに?

第6章 スバルの無資格検査と終わらない混乱

第7章 神戸製鋼の品質データ不正

第8章 データ改ざんの背後に「トクサイ悪用」?

第9章 ネット投稿をきっかけに不正を公表した東レ

第10章 三菱マテリアル子会社3社の品質データ不正

終章 三菱マテリアル報告書に書かれた衝撃の中身

編集部

編集部

長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
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