対談イベント「企業不正と第三者報告書」ゲストの久保利英明弁護士(右)と今沢真・経済プレミア編集長
対談イベント「企業不正と第三者報告書」ゲストの久保利英明弁護士(右)と今沢真・経済プレミア編集長

政治・経済日産、神戸製鋼は何を間違えたのか

企業不正の重大性を認識できない経営者の“鈍感さ”

編集部

イベント「企業不正と第三者報告書」(5)

 企業危機管理の第一人者、久保利英明弁護士と今沢真・経済プレミア編集長との対談イベント「企業不正と第三者報告書~日産、神鋼の不祥事に何を学ぶか」。参加した約130人から次々と質問の手が挙がった。詳報の最終回をお届けする。

会場には約130人の参加者がつめかけた
会場には約130人の参加者がつめかけた

 参加者の一人は「神戸製鋼所が不良品をどの社に納入したか、納入先の詳細は公表されていない。すべての納入先が、『我が社は大丈夫です』とか『こんな影響がありました』と公表して、サイトなどで一覧できればわかりやすいが、そのようにできない理由は?」と疑問を投げかけた。

 久保利弁護士は「神戸製鋼の不良品を使っているという“風評被害”を恐れて、『うちの名前は出さないでくれ』と望む会社もあると思う。社名だけを出すのは危険だが、安全性のチェックが終わり『回収しました』というような内容を一覧できる体制があるといいとは思う。いいアイデアだと思うが、実現はなかなか難しいかもしれない」と答えた。

消費者と会社との情報格差

 別の参加者は、「不正は内部告発で発覚するケースが多いが、そうでないときに、消費者が企業に不正を認めさせるノウハウというものがあれば教えてほしい」と尋ね、一例として2015年に問題が発覚した横浜市都筑区の「傾斜マンション」をあげた。

久保利英明弁護士
久保利英明弁護士

 久保利弁護士は「大変難しい問題だ。消費者と会社との間の情報格差は圧倒的なことが多い。消費者が不正を実証するのは非常に難しい。横浜のマンションのケースは傾いたからわかったが、傾かなかったら杭(くい)にどれだけ問題があるかということはわからなかった可能性が高い。それがデータ偽装の怖さでもある。わかった時には、手遅れだ」と指摘した。

 そして「不正案件はほとんど内部告発で発覚する。会社に告発しても取り上げられないときは、通報先は監督官庁やメディアになる。最近はネットの掲示板やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に書き込まれることも多い。そういう意味では、不正は必ずばれると思ったほうがいいし、消費者もそれほど心配しなくてもいい」と述べた。

不正のニュースを現場は知らない?

 日産自動車の不正に関する具体的な質問もあった。日産では、検査員資格のない者が完成車検査を行っていたことが発覚し、車の販売を停止した。ところが、発表があった後も工場では同様の不正が続いていた。質問者は「それがニュースとして報じられていて、工場で働いている方が知らないわけがない。極めて鈍感力にたけた人たちが多かったか、ひょっとすると、経営陣に対する不満が強く、意趣返しとしてやったのではないか」と指摘した。

今沢真・経済プレミア編集長
今沢真・経済プレミア編集長

 これに対して今沢編集長は、「そのどちらでもなかったかもしれない」と答えた。日産の調査報告書によると、日産は、検査員資格のない者が完成車検査をしてはいけないとの指示・命令を工場に出した。ところが、完成車検査のラインとそれ以外の工程が混在していて、どれが検査工程なのかはっきりしない部分があった。このため、わからないまま完成検査を行っていた実態があったという。

 そうした実態を踏まえ、今沢編集長は「経営者がもっと早く事態の重大さを認識しなければいけなかった。鈍感といえば、経営者のほうではないか」と述べ、質疑を締めくくった。

 <次回「なぜ東芝経営陣は「上場維持」に強くこだわったのか」>

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【第1回「企業不正」名ばかり第三者委員会では惨状は直らない

【第2回<企業不正>久保利弁護士「公表が信頼回復の早道だ」

【第3回<企業不正>第三者委員会の成否は経営者の度量次第

【第4回<企業不正>「実態なき第三者委員会」どう見分けるか

「日産、神戸製鋼は何を間違えたのか」出版

 日産自動車、神戸製鋼所、スバル、三菱マテリアル、東レと相次いで発覚した不正を、経済プレミアは詳しく報告してきました。その記事に大幅に加筆して「日産、神戸製鋼は何を間違えたのか」(毎日新聞出版、税込み1080円)を出版しました。

 筆者は今沢真・経済プレミア編集長兼論説委員です。書店やアマゾンなど通信販売でお求めください。

日産、神戸製鋼は何を間違えたのか」目次

第1章 発覚! 日産の無資格検査

第2章 社長謝罪後も続いていた不正

第3章 日産の“失われなかった20年”

第4章 無資格検査の“最終報告”

第5章 カルロス・ゴーン会長はどこに?

第6章 スバルの無資格検査と終わらない混乱

第7章 神戸製鋼の品質データ不正

第8章 データ改ざんの背後に「トクサイ悪用」?

第9章 ネット投稿をきっかけに不正を公表した東レ

第10章 三菱マテリアル子会社3社の品質データ不正

終章 三菱マテリアル報告書に書かれた衝撃の中身

編集部

編集部

長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
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