IT・テクノロジー知っておきたい電気自動車

「電気自動車に必須」モーターや電池は日本が強い分野

村沢義久 / 環境経営コンサルタント

 自動車の電動化が進むことによって、多くの装置や部品、資源がいらなくなり、逆に新しいものが必要になる。いらなくなるものの代表はエンジン。それから、エンジンを動かすための部品であるピストンリングや燃料噴射装置、点火プラグなど。

 ピストンリングは日本勢の強い分野だから影響は大きい。世界の市場は、トップ6社(3グループ)で90%を占めるが、その中に日本のリケン、TPR、日本ピストンリングの3社が入っている。円環状の小さな部品だが、1000分の1ミリ単位での精密さが求められる重要部品。それがいらなくなってしまう。

 またガソリンが不要なので、ガソリンスタンドがなくなり、10兆円といわれるガソリン市場が消える。また、オイルも必要なくなる。

日立金属がネオジム磁石の最大手

 一方、新しく必要になるものの中にも、日本の得意分野が含まれる。最初がモーター。テスラは誘導モーターだが、日本勢は永久磁石同期型を使っている。このタイプのモーターで要になるのが強力なネオジム磁石。日立金属がこの磁石に関する基本特許を保有しており(14年に期限切れ)業界最大手である。

 ネオジム磁石は文字通りネオジムというレアアース(希土類)を使う。問題は、その供給量の90%以上を中国が占めること。その中国が一時輸出規制を行ったことで、日本のユーザーがパニックに陥ったことがある。しかし、その後、日本の磁石メーカーが中国以外の供給元を開拓し、レアアースを使わないか、あるいは使用量を抑えた技術を開発するなどで、危機を脱している。

 2番目はバッテリーでこれも日本の強い分野だ。ほとんどの市販車で使われているリチウムイオン電池の実用化に日本人研究者が大きく貢献したし、現在、電気自動車(EV)用リチウムイオン電池ではパナソニックが世界シェア1位である。

EV化と並行し自動運転化も進む?

 エンジンの代わりのモーター、ガソリンの代わりのバッテリー、それから、出力の調整などを行う制御装置。これがEVの3点セットで、簡単に言ってしまえば、これだけで十分スムーズかつ力強く走れる。

 一方、EV化と並んで進んでいるのが自動運転。「オール電化」のEVはガソリン車より自動運転化しやすい。テスラ車には、すでに「完全自動運転機能対応のハードウエア」が搭載されているし、日産の新型「リーフ」は、ボタン操作ひとつで自動的に駐車ができる「プロパイロットパーキング」と名付けたシステムを採用している。

 さらに、一歩進めて、車をクラウドと接続することにより、自動運転の他、安全性向上、車内エンターテインメント、車両管理、走行管理などを提供する「コネクテッドカー」への進化も始まっている。そのためのカメラ、センサー、制御装置などがEVには多く使われるようになる。

EV化で部品ビジネスは拡大へ

 本来、自動車のEV化と自動運転は直接の関係はないのだが、「電気製品」であるEVは情報通信や自動制御と相性が良いため、両者は同時並行的に進んでいる。EV化によって自動車本体の部品点数は大幅に減ってしまうが、自動運転に関わる部品や装置を加えると、金額的にはむしろ拡大するという見方もある。

 <「知っておきたい電気自動車」は毎週月曜日に掲載します>

    ◇    ◇

「図解・EV革命」発売中

 この連載は、村沢義久さんの著書「図解・EV革命」(毎日新聞出版、税込み1512円)をウェブ用に編集したものです。書店やアマゾンなどの通販でご購入ください。

経済プレミア最新記事へ

VWやボルボ 電気自動車シフト相次ぐ欧州メーカー

「電気自動車で世界制覇」カルロス・ゴーン氏の野望

“鬼才”イーロン・マスクの両輪は「EVと宇宙」

「時価総額でGM超え」テスラへの期待は狂気の沙汰か

ソフトバンクが電気自動車に参入する可能性はあるか

村沢義久

村沢義久

環境経営コンサルタント

1948年徳島県生まれ。東京大学工学部卒業、同大学院工学系研究科修了。スタンフォード大学経営大学院でMBAを取得後、米コンサルタント大手、べイン・アンド・カンパニーに入社。その後、ゴールドマン・サックス証券バイス・プレジデント(M&A担当)、東京大学特任教授、立命館大学大学院客員教授などを歴任。現在の活動の中心は太陽光発電と電気自動車の推進。

イチ押しコラム

知ってトクするモバイルライフ
手のひらにしっかり収まる「アクオスR2コンパクト」。発売は1月

日本人の好みに応えたシャープ・アクオス小型スマホ

 シャープが、小型スマホの「アクオスR2コンパクト」を開発。ソフトバンクから2019年1月に発売されるほか、SIMフリーモデルとし…

ニッポン金融ウラの裏

NISAに最初の「5年満期」更新しないと非課税消滅

 少額投資非課税制度(NISA)が初めての期間満了を迎える。一定の手続きによって、さらに5年間の非課税期間延長となるが、いま、証券…

藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」
地下化されたワルシャワ中央駅上の広場。スターリン建築と民主化後のビルが林立する(写真は筆者撮影)

西に移動させられた国ポーランド 首都ワルシャワの今

 ◇ポーランド・ワルシャワ編(1) 36年前、高校の文化祭のディベートで、「史上最大の英雄は誰か」というお題に、「ポーランドで共産…

メディア万華鏡
週刊文春11月1日号

メディア騒がすドタキャン沢田研二の「格好いい老後」

 騒ぎ過ぎじゃないか。取り上げ方の息もなんだか長い。ジュリーこと沢田研二さん(70)が、10月17日にさいたまスーパーアリーナで予…

職場のトラブルどう防ぐ?

「部下の夫から連日クレーム」42歳女性上司の困惑

 A美さん(42)は、夫が院長を務めるクリニックの事務長を務めています。2カ月前から経理担当として働いているB子さん(33)の夫か…