くらし保険選びの相談室

5人家族の大黒柱「死亡保障5000万円」は多すぎ?

岩城みずほ / ファイナンシャルプランナー

 会社員のA郎さん(39)は、専業主婦の妻(34)と、長男(4)、次男(2)、長女(0)の5人家族です。自分に万一のことがあった場合に備え、長女の出産を機に保険金額5000万円の生命保険に加入しました。

 セールスパーソンから受けた説明に納得して加入したのですが、今は5000万円もの保険金額が必要なのか疑問を持っています。保険料が高く貯蓄が増えないからです。定年後を考えると、保険料を減らして貯蓄に回すべきではないかと思い直し、私のところに相談に来ました。

保険設計書の「必要保障額」に注意

 A郎さんの手取り年収は約540万円で、現在の保険料は年約55万円です。可処分所得の約10%を保険料として支払っています。保険の保障は、死亡保障5000万円の他、医療保障や就業不能保障、介護保障がつく充実の内容です。保険を選ぶ決め手になったのが、セールス時に提示された保険設計書の「必要保障額」が約5000万円だったことです。

 必要保障額は、将来の「支出見込み額」から「収入見込み額」を引いたものです。支出見込み額は、一般的には「末子独立までの生活費」と「末子独立後の配偶者の生活費」に、子供の教育費、住居費、葬儀代などを加えた額です。収入見込み額は、配偶者の収入の他、公的保障や死亡退職金(企業保障)、預貯金などを足した額です。必要保障額を将来の「不足分」として、私的保険を買って補うべき「保険金額」が提示されます。

 A郎さんはセールスパーソンと話した際に、子供の進路について漠然と「理系に進めばいいなあ」と伝えました。すると、理系なら大学院進学の可能性もあるので、3人分の学費がそれぞれ800万円ずつ加算されました。また自分が亡くなった場合に、家族が今と同じレベルの生活をできる費用を現在の生活費の7割程度に設定したため、必要保障額が大きくなりました。

万一の場合に受け取れる遺族年金

 通常、保険設計書の「必要保障額」は多めに設定されます。その額をうのみにして加入すると、A郎さんのように保険料負担が大きくなり、なかなか貯蓄ができません。保険料が手取り年収の10%というのも多すぎます。また、死亡保障の保険金は亡くなるまで自分(遺族)のものにはなりません。

 保険と貯蓄は全く性質の異なるものだと理解しましょう。保険で必要保障額のすべてをまかなおうとする必要はありません。ネット生保や共済などの掛け捨ての安い保険で必要最小限にし、万一のことがあれば、妻も働くことができます。

 また今、A郎さんにもしものことがあっても、公的保障の遺族年金があります。遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金の二つがあり、A郎さんと妻の年齢であれば、残された家族は次のように年金を受け取ることができます。

 遺族基礎年金は、子供がそれぞれ18歳になった年度末まで受け取れます。基本額が年77万9300円(2017年度の金額)で、加算額として2人目までにそれぞれ年22万4300円、3人目は年7万4800円です。合計年130万2700円です。遺族厚生年金は、A郎さんの厚生年金の加入期間を25年未満として簡易計算すると、年約71万9000円を妻が一生受け取れます。

 遺族年金の合計は年約202万円です。持ち家で、ローンの債務者が死亡したり高度障害状態になったりした場合に残債がなくなる団体信用生命保険(団信)に加入しているので、住宅ローンの負担もなくなります。

 相談の結果、A郎さんは保険金額を2500万円にして、ネット生保で10年定期の保険に加入し直しました。現在貯蓄額が約200万円あるので、医療保障などの特約は必要ないと判断しました。毎月の保険料は4105円となり、年4万9260円です。手取り年収の0.9%に抑えることができ、年50万円の貯蓄ができるようになりました。

 <「保険選びの相談室」は今回で終わります。5月から岩城さんの新連載が始まります>

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岩城みずほ

岩城みずほ

ファイナンシャルプランナー

CFP認定者、オフィスベネフィット代表。NHK松山放送局を経て、フリーアナウンサーとして14年活動。その後セミナー講師、生命保険会社を経て2009年に独立。個人相談のほか、貯めると増やすの車座の会「C(貯蓄)リーグ」、良質なマネーの勉強会「サムライズ」主催。著書に「人生にお金はいくら必要か」(山崎元氏と共著・東洋経済新報社)などがある。

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