「銀行員はどう生きるか」を出版した金融ジャーナリストの浪川攻さん=2018年4月19日撮影
「銀行員はどう生きるか」を出版した金融ジャーナリストの浪川攻さん=2018年4月19日撮影

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斜陽化したメガバンク「銀行員はどう生きるか」

編集部

「銀行員はどう生きるか」浪川攻さんに聞く(1)

 右肩上がりの成長が当たり前だった「銀行神話」が瓦解している。超低金利で収益が落ち込み、メガバンク3グループは昨年秋、人員削減を相次いで発表した。就活生の人気ランキングでも「入りたい企業」の順位が大きく下がった。この先も大激変が見込まれるなか、銀行を長く取材してきた金融ジャーナリスト、浪川攻さん(63)が新著「銀行員はどう生きるか」(講談社現代新書)を出版した。浪川さんに銀行員の未来を聞いた。【聞き手、経済プレミア編集長・今沢真】

 --銀行員は「安定した職業」というイメージでしたね。

 ◆浪川攻さん そうです。手堅くて冒険はしない。面白みがなく慇懃(いんぎん)無礼というイメージもありましたが、子供が銀行に就職すれば親も安心でした。

 --それが今、銀行員の働く現場はどうなっているんですか。

浪川攻さん
浪川攻さん

 ◆ついこの間までは、とにかく稼いで利益を積み上げなくちゃいけないというプレッシャーがあった。ひたすら歯車のごとく走り、働き詰めというのがバブル崩壊後の20年です。

 高度成長なんかとうに終わって、成長率が期待できる世の中じゃなくなった。銀行は斜陽産業化していたのだから、利益を上げる仕組みを根本から変えなければいけなかった。それなのに、変わらないまま来た。そうしたなかで、毎年、激しい増益圧力が銀行員にかかっていました。

 --銀行が斜陽産業になった根本原因は何でしょう。

 ◆企業数や人口が減り取引先の数が減っている。パイが小さくなったのに銀行の数は大手行がメガバンクになっただけ。しかもみんな同じビジネスモデルです。お金を借りる需要に対して資金の出し手が過剰で、利ざやが下がって利益率も上がらない。その典型的な隘路(あいろ)にはまっていたのがこのところの日本の銀行業です。

マイナス金利政策で収益力のなさが露呈

 --そこに日銀の量的金融緩和とマイナス金利政策が加わった。それがどういう影響をもたらしたのでしょう。

 ◆間違ってはいけないのは、マイナス金利じゃなくても斜陽産業化していたわけです。そこにマイナス金利政策でさらに厳しい環境になり、収益力がないことが露呈したんです。

 --銀行は預金でお金を集め、企業に貸して利ざやを稼いでいた。その利ざやがなくなった。

 ◆全体の成長性がないから利ざやは縮小する。過当競争で、みんなで利ざやのつぶし合いをやる。そこにマイナス金利が来たから「総資金利ざや」という銀行の収益力の主要な指標が一挙にマイナスになるということが起きたんです。

 --過去の栄光にすがっていた銀行が、そうした事態に直面して生き残るために変わろうとしているんですね。

 ◆ようやくね。ただ、メガバンクは今でも毎年、数千億円の利益を上げています。それは過去の遺産を食べているだけです。銀行経営者は改革が必要なことはわかっていたはずですが、手をつけられなかった。

 --さすがに銀行経営者も、これはまずいと急に思い始めたんですね。

 ◆そういうことです。それは「マイナス金利がもうすぐ終わる」という期待感がなくなったのが大きいです。自分たちが厳しい環境に合わせた形に変わらないと生き残れない。それはもっと前から起きていた斜陽産業化からの脱却しかないわけです。コスト削減と生産性を高め、価格競争力を強める。当たり前のことに向かおうとしているんです。

インタビューに答える浪川攻さん。手前は今沢真・経済プレミア編集長
インタビューに答える浪川攻さん。手前は今沢真・経済プレミア編集長

人員削減を相次いで発表したメガバンク

 --去年の秋にみずほ銀行の1万9000人分の業務削減をはじめ、メガバンクがバタバタと人員削減を発表したのが目立ちました。ほかにどんなことをやろうとしているんですか。

 ◆コストを削減しながら品質をよくするということです。コストを削減して人を少なくするとサービスの質が悪くなって「二律背反」になるのですが、それを両方、実現するしかない状況になったんです。

 --サービスを上げないと顧客が逃げるから?

 ◆そういうことです。三菱とか住友とか財閥の冠をつけた銀行は、取引先が他の銀行へ行くことはなく、客を独占していたんです。ところが近年、「フィンテック(金融技術)」という言葉が象徴ですが、銀行以外からの金融ビジネス参入が相次いでいる。銀行は客を選別してきたが、戦後初めて選別される側に変わったわけです。

浪川攻さんの略歴

なみかわ・おさむ 金融ジャーナリスト。1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌で記者として活躍。東洋経済新報社の契約記者を経て、2016年4月、フリーに。著書に「金融自壊」(東洋経済新報社)など。

 <次回「客を選んできた銀行が「選別される側」に転落した」>

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編集部

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長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
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