ボリビア・ウユニ塩湖の夕暮れ=2017年9月、平川哲也撮影
ボリビア・ウユニ塩湖の夕暮れ=2017年9月、平川哲也撮影

IT・テクノロジー知っておきたい電気自動車

「EVの血液・リチウム」水より軽い金属を巡る争い

村沢義久 / 環境経営コンサルタント

 電気自動車(EV)の性能を左右するのは蓄電池だ。その蓄電池の血液とも言えるのがリチウム。そこで注目されるのが資源としてのリチウムで、近年の需要増により2006~16年の間で、価格は約3倍に高騰している。

 リチウム(Li)は、原子番号3、周期律表で一番左の列、水素(H)のすぐ下にある。金属だが、水素、ヘリウム(He)に次ぐ3番目に軽い元素で、比重は0・534で水より軽い。

 現在の主要生産国はチリ、オーストラリア、アルゼンチン、中国など。チリ、アルゼンチンにボリビアを加えた南米3国のリチウム産出地は「リチウムトライアングル」と呼ばれている。ボリビアには世界最大のリチウム集積地であるウユニ塩湖があるが、政治的な問題によりリチウム生産の事業化には至っていない。

塩湖で産出される炭酸リチウム

 ウユニ塩湖と言えば、絶景ポイントで有名。ウユニの町の主要産業は観光と塩の生産だ。なぜ、こんな標高3700メートルの山の上に巨大な塩湖ができたかというと、アンデス山脈が隆起した際に、大量の海水が山上のくぼみに取り残され、その後水が干上がって、塩だけが残ったのだ。

乾期のボリビア・ウユニ塩湖=2017年9月、平川哲也撮影
乾期のボリビア・ウユニ塩湖=2017年9月、平川哲也撮影

 電池関係者にとってはその塩といっしょに産出されるリチウム資源(炭酸リチウム)が重要。そこで、日本はウユニ塩湖でのリチウムの共同開発を目指して、ボリビア政府と交渉を始めた。しかし、ボリビア政府は外国の参加には否定的で、共同開発交渉はあまり進んでいないようだ。

 日本は、リチウム資源の100%を輸入に頼り、そのうちチリからの輸入が8割を占める。チリにはウユニ塩湖に次ぐ大きさのアタカマ塩湖があるが、ここも標高2000メートル以上の乾燥地帯だ。

 次世代の電池として現在開発されている全固体電池も注目されているが、これはリチウムイオン電池の一種で、電解質が液体から固体に変わるだけ。従って、全固体電池の時代になってもリチウム資源の需要が減るわけではない。

太陽光を活用した「真のエコカー」

 EVを「真のエコカー」として使うためには、太陽光などの自然エネルギーで発電する必要がある。不安定な太陽光発電を平準化するため蓄電池が必要だが、駐車中のEVの蓄電池を使うこともできる。このように、EVと太陽光発電は並行して発展し、仲を取り持つのが蓄電池というわけだ。

 テスラは、EV、太陽光発電、蓄電池の全てを販売している。テスラはEVのバッテリー技術を応用した定置型の蓄電池システムを持つが、最近はメガソーラー向けも売り出している。さらに、16年に太陽光発電もラインアップに加えた。

 日本では、EV、太陽光発電、蓄電池を全てそろえているメーカーはないが、日産がEVの蓄電池の家庭用活用に熱心だ。15年に「リーフ」から一般住宅に電力を供給するシステムの販売を開始した。システムの元々の目的は、夜間電力でリーフを充電し、その電力を昼間に家庭用電源として活用すること。太陽光発電と組み合わせることもできる。

 例えば、昼に太陽光発電を使って「リーフ」の電池にためておき、夜間にその電力を家庭で使う、というやり方だ。現在は、太陽光発電による電力の売電価格が高いので、自宅で使って余った分は「リーフ」の電池を充電するより電力会社に売った方が得だ。しかし、将来売電価格が下がった時点では、本来の使い方になるだろう。

 <「知っておきたい電気自動車」は毎週月曜日に掲載します>

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村沢義久

村沢義久

環境経営コンサルタント

1948年徳島県生まれ。東京大学工学部卒業、同大学院工学系研究科修了。スタンフォード大学経営大学院でMBAを取得後、米コンサルタント大手、べイン・アンド・カンパニーに入社。その後、ゴールドマン・サックス証券バイス・プレジデント(M&A担当)、東京大学特任教授、立命館大学大学院客員教授などを歴任。現在の活動の中心は太陽光発電と電気自動車の推進。

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