「東芝問題~社外取締役は役割を果たしたか」ゲストの中島茂弁護士(左)と今沢真・経済プレミア編集長
「東芝問題~社外取締役は役割を果たしたか」ゲストの中島茂弁護士(左)と今沢真・経済プレミア編集長

政治・経済東芝問題リポート

覚悟なき“お飾り”社外取締役は役に立たない

編集部

「東芝問題と社外取締役」対談イベント(4)

 対談イベント「東芝問題~社外取締役は役割を果たしたか」で登壇した中島茂・弁護士(中島経営法律事務所代表)は、多くの企業の顧問弁護士を務めるほか、社外取締役・監査役の経験も豊富だ。イベント詳報の4回目は、今沢真・経済プレミア編集長の質問に答え、中島弁護士が指摘する社外取締役に必要な「技術」や「覚悟」を紹介する。

現場で社員と話をすることが大事

 中島弁護士は現在、3社の社外取締役・監査役を務めている。基本的な仕事は取締役会への出席と、議題に対して賛否・適否の判断をすることだ。議題になる事項は、担当者から事前に説明を受け、自分なりの問題意識を持って取締役会に出席し、発言するという。

今沢真・経済プレミア編集長
今沢真・経済プレミア編集長

 説明を受けるだけだと、取締役会で議題が採決されるときに「なんとなく」賛成してしまう。このため、「現場に行きたい」「事業担当者と話をしたい」などと要求し、現場で工場長や技術者、営業部隊の人たちと話をするようにしており、そのことがとても大事だという。

 社外取締役は、社内出身の取締役と同様に、会社法で定められた「取締役の責任」を負う。代表訴訟で訴えられる可能性もある。取締役会で決議した議案が後で問題になり、法的責任を問われれば基本的には他の取締役と連帯して責任を負うこともありうる。ただし、取締役会で議案に反対して議事録に残れば、取締役はその責任を免れる。

「何でもかんでも反対」では機能しない

 執行部からあるプランの説明を受けたときに、企業の信用を損なうリスクがあると考えたことがあった。「このプランはやめるべきです」と言ったが、執行部から「どうしてもやりたい」と言われた。その時、中島氏は、「私が反対したことを覚えておいてください」と強い調子で伝えた。結局、プランは中止されたという。

 一方で中島氏は、「何でもかんでも反対して、任期1年で終わり」になってしまうと、社外取締役としての責任を果たしたことにならないと考えている。会社の風土や、トップの癖がわかるまでにはある程度、時間がかかる。「トップの癖」とは何か、中島氏の説明は次の通りだ。

中島茂弁護士
中島茂弁護士

 「このトップはちょっと言うと、むきになって反対のことをするとか、『代表訴訟』を持ち出すと顔色を変える人とか、逆に『それがどうした』という人もいる。人によってさまざまなので、わかってもらうような説明の仕方、説得の仕方がある。そういう意味では社外取締役はある程度、技術が必要です」

「名誉職と考えるのは大間違い」

 社外取締役に対して中島氏が求めることは、「“飾り”や“お客さま”であってはならない」ということだ。株主や社会から、会社のガバナンス(統治)を確立させる特命を受けて取締役会に乗り込む、それが社外取締役。その使命を果たす覚悟が必要になる。

 中島氏は最後に、「大企業の社外取締役をやっていることが一つのステータスだと思うのは大きな間違いだ。名誉職ではない。株主のため、消費者のため、社会の人々のために体を張ってでも間違った方向に行かせないのが社外取締役の役割。それを強く言いたい」と言って対談を締めくくった。

 <次回「使命感を持って働く社外取締役がなぜ機能しないか」>

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編集部

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長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
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