イベント参加者の質問を聞く中島茂弁護士
イベント参加者の質問を聞く中島茂弁護士

政治・経済東芝問題リポート

使命感を持って働く社外取締役がなぜ機能しないか

編集部

「東芝問題と社外取締役」対談イベント(5)

 イベント「東芝問題~社外取締役は役割を果たしたか」は、ゲストの中島茂・弁護士(中島経営法律事務所代表)と今沢真・経済プレミア編集長の対談のあと、参加者との質疑に入った。イベント詳報の最終回をお届けする。

社外取締役の仕組みは機能しない?

 最初の質問は、「社外取締役になる方は、最初は世のため人のため、正義のためにという心意気を持って引き受けると思うが、就任後、心意気を失う人が多い気がする。なぜ、そうなるのか」だった。

今沢真・経済プレミア編集長
今沢真・経済プレミア編集長

 これに対して、今沢編集長が「実は自分も同じ疑問を抱えている」と答えた。「例えば、東芝の不正会計発覚後に社外取締役に就任した方は、みな『東芝を立て直さなければならない』との使命感で引き受けたはず。ところが成果が見えなかった」と指摘した。

 2017年10月に開かれた東芝の臨時株主総会では、株主から「東芝は超大物が社外取締役に就任しているのに、会計不祥事や原発をめぐる問題が続いた。社外取締役のガバナンスは仕組みとして効かないものなのか」との質問があったことが紹介された。

株主総会での前田新造氏の発言

 これに対し社外取締役の前田新造・元資生堂社長が次のように回答している。

 「我々が社外取締役に就任してから2年が経過した。早い段階で(米原発損失の引き金になった)S&W社買収の出来事があって結果としてそういう(原発事業破綻の)事態を招き、我々としても痛恨の極みだった。ただ、その後、意思決定過程での社外取締役の関与の度合いは深まり、ガバナンスは改善を続けている。今後も努力を続ける」

 原発建設を担当していたS&W社の買収は、前田氏が社外取締役に就任してから1カ月後に決定した。米原発事業は当時、すでに破綻状態だったと指摘されている。今沢編集長は「前田氏の発言を聞くと、社外取締役としての心意気を捨てずに一生懸命やっている意気込みはわかる。ただ、外からはそう見えないギャップを強く感じた」と述べた。

中島茂弁護士
中島茂弁護士

社外取締役にも厳しい視線が必要

 中島弁護士への質問が続いた。「社内出身の取締役は、サラリーマンの上がりポストで、ことを荒立てる発言はしない。一方で、社外取締役を掛け持ちして取締役会の出席数が少なく、名誉職の気分で引き受けている人もいるようだ。それではガバナンスは効かない。株主総会の壇上で寝ていたり、そっぽを向いたりしている人もいる」

 中島弁護士が「そういうときは、株主として『寝ているのはなんだ』と叱ってください。株主総会で株主からそう言われると、取締役はけっこう重く受け止めているので、ぜひ言ってほしい。また、そういう気持ちで取締役を見る個人株主が増えることを期待している」と回答した。

 さらに、「社外取締役は、人生をかける気持ちでやるべきだ。取締役として代表訴訟という法的なリスクにさらされていることをわきまえて、リスクを背負いながら、世のため人のために発言する、というのが社外取締役のあるべき姿だと思う」と述べた。

セブン&アイ人事抗争で果たした役割

 最後の質問は、「セブン&アイ・ホールディングスの社外取締役は役割を果たしたと思う。東芝と違いが出たのはなぜか」だった。これは2016年、セブン&アイで起きた人事抗争を指す。

記者会見で引退を表明したセブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長(左手前、肩書きは当時)=2016年4月7日撮影
記者会見で引退を表明したセブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長(左手前、肩書きは当時)=2016年4月7日撮影

 セブン&アイ会長だった鈴木敏文氏が、傘下のセブン‐イレブン社長を退任させようとした人事案に、社外取締役が激しく反対した。鈴木氏はセブン‐イレブン創業者で、当時83歳。この抗争が引き金となり、鈴木氏が引退して世代交代が進んだ。

 質問には今沢編集長が「社外取締役は『セブン‐イレブンはきちんと経営成績を上げているのに、その社長を辞めさせる理由がない』として退任案に反対した。その主張はわかりやすかった。逆に鈴木氏がなぜセブン‐イレブン社長の退任にこだわったのか、理由がはっきりしなかった」と振り返った。

 さらに、「当時、東芝の出来事で社外取締役は機能しないという議論が広がっていた。セブン&アイでは『社外取締役が機能した』という話になり、多くの社外取締役が元気を取り戻した」と振り返った。

 <「東芝問題と社外取締役」は今回で終わります。近く「東芝問題と銀行」を掲載します>

覚悟なき“お飾り”社外取締役は役に立たない

東芝社外取締役が声を上げられなかった問題点の数々

社外取締役に求められる「偉大な素人」の感覚と主張

編集部

編集部

長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
twitter 毎日新聞経済プレミア編集部@mainichibiz
facebook 毎日新聞経済プレミア編集部https://www.facebook.com/mainichibiz

イチ押しコラム

藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」
地下化されたワルシャワ中央駅上の広場。スターリン建築と民主化後のビルが林立する(写真は筆者撮影)

西に移動させられた国ポーランド 首都ワルシャワの今

 ◇ポーランド・ワルシャワ編(1) 36年前、高校の文化祭のディベートで、「史上最大の英雄は誰か」というお題に、「ポーランドで共産…

メディア万華鏡
週刊文春11月1日号

メディア騒がすドタキャン沢田研二の「格好いい老後」

 騒ぎ過ぎじゃないか。取り上げ方の息もなんだか長い。ジュリーこと沢田研二さん(70)が、10月17日にさいたまスーパーアリーナで予…

職場のトラブルどう防ぐ?

「部下の夫から連日クレーム」42歳女性上司の困惑

 A美さん(42)は、夫が院長を務めるクリニックの事務長を務めています。2カ月前から経理担当として働いているB子さん(33)の夫か…

ニッポン金融ウラの裏

進む「キャッシュレス化」誰が責任を負っているのか

 キャッシュレス決済を巡る論議が高まり続けている。政府も外国人旅行者の増大を踏まえて、キャッシュレス化推進の旗を振り続けている。社…

知ってトクするモバイルライフ
デザインや機能を一新した「iPadプロ」。左が11型、右が12.9型

新「iPadプロ」はホームボタンなくして超高性能

 アップルは、米ニューヨークで10月30日(現地時間)、「iPadプロ」の新モデルを発表した。11月7日に発売される予定で、価格は…