海中道路
海中道路

政治・経済素顔の沖縄けいざい

「コールセンターだけじゃない」沖縄振興の次の主役は

渡部晶 / 沖縄振興開発金融公庫副理事長

 沖縄の「比較優位」とは何か。その優位さを伸ばすことが、沖縄の振興に重要だと有識者は指摘する。やさしく言えば、圧倒的に優位に立つ東京との対比で、沖縄は何が得意なのかということだろう。

 現在、沖縄が力を入れているものは三つある。「観光、物流、情報通信技術(ICT)」だ。沖縄の地理的・気候的な優位性から、観光、物流の二つはわかりやすいストーリーだ。

 残る「情報通信技術」だが、沖縄県では早い時期からコールセンター誘致に取り組んできた。2017年1月現在で、立地企業数81、雇用者数1万8108人と、国内有数のコールセンター集積地となっている。

 しかし、ここにきて「賃金が低い」、「クレーム対応でメンタル的に厳しい職場である」などの負のイメージが出てきている。離職率も高いことが指摘されている。沖縄でも人手不足が顕在化してきたこともあって採用に苦戦し、産業として伸び悩んでいる。沖縄でのコールセンター事業の比較優位が失われつつあると言わざるを得ない。

産業集積を目指すIT津梁パーク

IT津梁パーク
IT津梁パーク

 コールセンターにとどまらず、IT産業を高度化・多様化することが求められている。沖縄県がITの中核的施設として長年整備してきたのがうるま市の「沖縄IT津梁(しんりょう)パーク」である。沖縄県中部の東海岸に位置するうるま市は、05年に2市2町が合併し誕生した人口約12万人の市である。「うるま」の名称は市民公募で決まったが、「珊瑚の島」を意味する沖縄島の美称である。

中城湾
中城湾

 IT津梁パークは、遠浅の中城湾の埋め立て地にあり、約7万4000平方メートルの敷地に、中核機能支援施設、企業立地センター、アジアIT研修センターといった施設が立地する。那覇空港から車で45分ほどでアクセスできる。

 初期投資の少ない賃貸という形でオフィスを確保することができ、機器のレンタルも受けられる。立地企業への助成制度や融資制度も整えられている。

賃貸工場
賃貸工場

 付言すれば、中城湾港から東に位置し、勝連半島と平安座島をつなぐ、4.7キロの海中道路はすてきなドライブコースだ。最も先端にある伊計島まで伊計大橋を通って車でいける。伊計島はサーフィンの有名なスポットでもある。伊計ビーチや大泊ビーチは透明度が高く、地元や観光客に人気だ。伊計島からは、辺野古を含む大浦湾が遠望できる。東海岸を代表するリゾート地が近接することも大きな魅力である。

海中道路
海中道路

沖縄の魅力で世界中から人材を

 IT津梁パークは、高度ソフトウエア開発といった新しいIT産業の拠点となることを意図し、8000人の新規雇用創出を目指している。恵まれた条件をインセンティブとして、県内外のIT企業の集積が最近急速に進んでいる。しかし、やや総花的で、特色ある産業集積がなされているとは言い難い状況にあることも否めない。

 このIT津梁パークに本社を置く株式会社レキサスの比屋根隆社長は「観光テック」を目指せと主張する。沖縄の比較優位である観光をめぐるさまざまな課題をITで解決しようというものだ。

 1998年創業の同社はクラウド型システム開発を進めるエンジニアやクリエーターの育成に力を注いできた。沖縄の魅力を前面に打ち出した「観光テック」を旗印に、専門的な人材を世界中から集めれば「世界で最先端のソリューションを提供できるようになる」というのだ。

 こうした明確な方向性には大いに共感を覚える。情報通信技術が沖縄で本当に花開くかどうか、大きな岐路にあることは間違いない。

    ◇    ◇

 財務省、内閣府や地方自治体の役職を歴任し、沖縄をはじめとする地域振興行政に深く関わってきた渡部晶・沖縄振興開発金融公庫副理事長が、沖縄の経済にかかわる話をつづります。原則として月1回の掲載です。

渡部晶

渡部晶

沖縄振興開発金融公庫副理事長

1963年福島県生まれ。87年京都大学法学部卒、大蔵省(現財務省)に入省。福岡市総務企画局長、財務省地方課長兼財務総合政策研究所副所長、内閣府大臣官房審議官(沖縄政策担当)などを経て、17年6月から現職。沖縄をはじめ、地域振興の仕事に携わってきた。「月刊コロンブス」(東方通信社)で書評コラムを掲載中。

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