メルカリの山田進太郎会長兼CEO
メルカリの山田進太郎会長兼CEO

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「メルカリ上場」それでも不安な米国展開と国内頭打ち

エコノミスト編集部

 フリマアプリ最大手のメルカリが東証マザーズに上場した。世界での活躍が期待されるユニコーン企業(企業価値10億ドル〈1100億円〉以上の非上場企業)の株式公開日本1号案件とあって話題性は高い。週刊エコノミスト7月3日号よりお届けする。【金融ライター・田茂井治+編集部】

マザーズで時価総額首位

スマホで簡単に売買できる
スマホで簡単に売買できる

 上場初日(6月19日)、終値ベースの時価総額は7100億円超となり、SNS(交流サイト)大手のミクシィに3倍の差をつけて、マザーズの時価総額首位に立った。初日は一時、時価総額が8000億円を超える場面もあり、兜町関係者も「予想以上」と漏らす人気ぶりだが、米国事業の黒字化という重い課題を抱えている。

 メルカリは2013年2月創業。個人が不用品を売買できるスマホアプリ「メルカリ」で急成長した。アプリの累計ダウンロード数は昨年12月に1億(日米合算)を突破。17年6月期の流通総額(取引高の合計、国内)は2320億円に上る。メルカリは出品者から徴収する取引額の10%相当の手数料を主たる収益源としている。

 メルカリが市場の注目を集めるのは、海外事業の成長が期待されているためだ。米国はネット競売大手「イーベイ」のほか、SNS大手「フェイスブック」も利用者間のモノの取引機能を拡充するなど個人間の売買市場が発達しているが、フリマアプリの市場は未発達だ。「競合も参入しているので競争は厳しいが、当たれば市場規模は大きい」(松井証券の窪田朋一郎・シニアマーケットアナリスト)と見られている。

見えない米国事業の黒字化

 ただ、メルカリの米国事業は赤字が続いている。同社が米国版を本格開始したのは14年9月。有価証券報告書の連結業績から連結日本事業の業績を差し引いて、海外事業の業績を算出すると、海外事業の16年6月期売上高は0円で、営業損失は31億円の赤字だ。17年6月期も売上高は8億円止まりで、63億円の営業損失だった。18年6月期第3四半期(1~3月)も売上高15億円、営業損失69億円。

 上場後の記者会見で、米国の赤字が解消される時期について山田進太郎会長兼最高経営責任者(CEO)は「いつとは明言できない」と答えるのみだった。

 有価証券報告書に記載されている米国の累計ダウンロード数は右肩上がりだが、取引高の合計は四半期ベースで横ばいが続く。18年第3四半期(3月末)までの累計取引高は、前年同期が150億円だったのに対して、169億円にとどまった。

 米国版について、米国法人CEOのジョン・ラーゲリン氏は会見で「屋外広告やラジオなど競合他社とは異なる手段の広告を始めている」と説明したが、頻繁に利用するユーザーの大幅増にはまだ至っていない。

利益予想は非開示という“不誠実”

 メルカリ日本版は18年6月期の第3四半期(3月末)までに約50億円(日本のみの連結)の営業利益を確保しているが、「このままでは国内の利益を海外の宣伝費として吐き出し続ける可能性が高い」(DHZフィナンシャルリサーチ日本株情報部の田中一実氏)と危惧する声もある。

 また、業績見通しを非開示にしていることに不信感を持つ投資家もいる。メルカリは18年6月決算の業績予想について、予想売上高(前期比62%増の358億円)しか明らかにしておらず、利益予想は公表していない。同社は14年6月期以降、4期連続の最終(当期)赤字で、18年6月期も赤字と見られている。「期末直前の上場にもかかわらず、利益予想非開示なのは投資家保護の観点から不誠実」(兜町関係者)という厳しい指摘がある。

 一方で、国内フリマ市場も新たな局面を迎えている。楽天はフリマアプリ「ラクマ」を6月4日から有料化し、出品者から販売額の3.5%の手数料を徴収し始めた。広告宣伝やカスタマーサポートの強化に乗り出すとしている。メルカリの国内シェア頭打ちを指摘する声もあり、厳しい戦いを迫られることになりそうだ。

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 この記事は、週刊エコノミスト7月3日号の記事をウェブ用に編集したものです。連載「週刊エコノミスト・トップストーリー」は原則、毎週水曜日に掲載します。

<週刊エコノミスト7月3日号>

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藤枝克治編集長率いる経済分野を中心として取材、編集するチーム。経済だけでなく社会、外交も含め幅広く取材する記者の集団であり、各界の専門家にコラムや情報提供を依頼する編集者の集団でもある。

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