くらし人生100年時代のライフ&マネー

収入のない専業主婦でもイデコが節税策になる理由

渡辺精一 / 経済プレミア編集部

確定拠出年金(4)

 個人型の確定拠出年金「イデコ(iDeCo)」の特徴は手厚い税制優遇策にある。大手金融機関のイデコ担当者は「制度の仕組みが一般にわかりにくいが、店舗や職域でメリットを説明すれば、ほとんどの人が加入に前向きになる」という。ただし例外は専業主婦だ。「説明するほど、関心が遠のく人も増えてくる」

所得税・住民税が減る仕組み

 なぜか。イデコの税制優遇策は「入口・途中・出口」の3段階で用意されている。(1)入り口=掛け金が非課税(2)途中=運用益が非課税(3)出口=受け取り時に一定部分が非課税--の三つだ。このうち最もメリットの大きいのは(1)だが、収入のない専業主婦はそれが生かせないためだ。

 (1)は簡単にいえば、掛け金を積み立てると「所得税・住民税が減る」仕組みだ。

 所得税や住民税の額は、年収から一定の金額を差し引き、課税対象となる「課税所得」を求めて算出する。年収が同じでも課税所得が少ないほど税金は少なくて済む。差し引くことを「控除」という。イデコの掛け金は「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、その全額を年収から差し引くことができる。

 年収600万円で、各種の控除を差し引き、課税所得300万円となった人のケースでみよう。月2万円、年24万円を掛け金として積み立てると、このぶんが300万円から差し引かれるため、イデコに加入していない場合に比べ、年4万8500円の節税になる。

 これは、節税分を差し引いた掛け金の実質負担19万1500円に対し24万円を積み立てたのと同じになる。購入した金融商品の運用分がなくても、それだけで実質利回りは25.3%にもなる。

 これがイデコの最大の「お得」な特徴であり、金融機関やファイナンシャルプランナーがイデコを説明をする際には、まずこの点を強調する。

 ただし、このメリットを享受できるのは、収入のある人に限られる。収入がなく税金を納めていない専業主婦には「無縁の話」と映ってしまう。夫の扶養で働いているパート主婦も同様だ。

忘れがちな「二つの非課税」

イデコには三つの税制優遇がある(イデコのパンフレット表紙)
イデコには三つの税制優遇がある(イデコのパンフレット表紙)

 フィデリティ退職・投資教育研究所が1万人を対象にした大規模調査でも、専業主婦は資産が多いほどイデコの認知率は高いが、逆に「加入したくない」という人が増える傾向がはっきりしている。ただし「掛け金が非課税であることを強調するため、他の優遇策が忘れられていることが多い」(同研究所の野尻哲史所長)。専業主婦でも(2)(3)のメリットは受けることができるからだ。

 通常、 株式の売却益や配当金、預金の利子には20.315%課税(所得税・復興特別所得税・住民税)される。(2)のメリットとは、こうした運用益の課税がなく利益をまるごと受け取れるというものだ。この点は、別の非課税制度であるNISA(少額投資非課税制度)と同じだ。

 最後の(3)のメリットは現役世代にはわかりにくいかもしれない。イデコは年金であるため受け取る際に課税されるが、その税優遇が受けられるというものだ。

 受け取り方には、一時金と年金がある。一時金の場合は「退職所得控除」の対象となり、掛け金を拠出していた期間が20年以上になると控除金額が高まる仕組みで、25年なら1150万円までは課税されない。年金で受け取る場合は「公的年金等控除」の対象になる。65歳までは年60万円まで、65歳以降は年120万円までは課税されない。専業主婦の場合、掛け金上限は年27万6000円で、最大の40年間でも1104万円。非課税の恩恵を受けられる可能性は高いだろう。

メリット生かしNISAと使い分け

 つまり、専業主婦にとって、イデコのメリットとは運用益が非課税になる資産運用手段であり、NISAとほぼ変わらない。ただし、注意したいのは、イデコは年金であるため、原則60歳まで引き出すことができないことだ。これはいつでも引き出せるNISAとの大きな違いだ。

 専業主婦の公的年金は国民年金だけで、夫が厚生年金に加入していれば、国民年金保険料は負担しなくてもいい仕組みになっている。しかし、夫の転退職や健康状態など将来の不確定要素はあるだろう。イデコで自分名義の年金を作ることができるメリットは決して小さくない。

 <「人生100年時代のライフ&マネー」は毎週月曜日更新です>

渡辺精一

渡辺精一

経済プレミア編集部

1963年生まれ。一橋大学社会学部卒、86年毎日新聞社入社。大阪社会部・経済部、エコノミスト編集次長、川崎支局長などを経て、2014年から生活報道部で生活経済専門記者。18年4月から現職。ファイナンシャルプランナー資格(CFP認定者、1級FP技能士)も保有。

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