「第三者委員会報告書格付け委員会」の記者会見=2018年7月3日撮影
「第三者委員会報告書格付け委員会」の記者会見=2018年7月3日撮影

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雪印種苗の第三者委が「メール復元」で暴いたウソ

編集部

雪印種苗の「種子偽装」第三者報告書(2)

 牧草や飼料作物の種子の品種の一部を長年にわたり偽って販売してきた雪印メグミルクの100%子会社、雪印種苗(本社・札幌市)。同社の第三者委員会が4月27日に不正の調査報告書を公表し、同社社長(65)は即日、引責辞任した。

 報告書はこの前社長が、課長当時から不正に関わり、専務になってからも他の役員とともに社内調査で不正を隠していたことを暴いた。第三者委員会はデジタル調査の手法で社内のサーバーから過去のメールを復元し、前社長に事実を突きつけた。その経過を詳しく紹介しよう。

引責辞任した前社長が不正に関与

 前社長は1998年、札幌の本社で種苗課長に就いた。課内の担当者から在庫のない品種の出荷について相談を受け、品種を偽装する行為が同課で行われていたことを初めて知った。このとき、上司の部長(前任の種苗課長)に対し「(不正は)やりたくない」と言ったが、やるよう指示された。

 2001年ごろまで偽装出荷が続いていたが、02年にグループ会社の雪印食品の牛肉偽装事件が明るみに出て、同社が廃業する事態に至った。前社長は、種子の偽装を続け、発覚したら雪印種苗も潰れると思い、担当者に偽装をしないよう指示したという。ところが同課では、その後も偽装出荷がずるずると続けられていた。

輸入牛肉を国産牛肉と偽装したことを認め、頭を下げる雪印食品の経営陣=2002年1月23日、石井諭撮影
輸入牛肉を国産牛肉と偽装したことを認め、頭を下げる雪印食品の経営陣=2002年1月23日、石井諭撮影

 種苗課が偽装していた種子は海外から輸入したものだ。顧客から注文を受けたものの在庫がなかったときに、同業他社との競合があり「ない」とは言えず、別の品種の種子を偽って出荷していた。また、品種名を表示せず販売する行為も常態化していた。

でたらめな社内調査

 14年8月、内部告発を受けたとして、新聞社(社名は非公表)の記者が雪印種苗に取材を行った。取材を受けて同社は社内調査を行い、(1)02年まで不適切な行為が行われていたが、雪印食品の偽装事件発覚以降は一切行われていない(2)10年より前の資料は廃棄され、内容を確定することができなかったーーと結論づけた。

 ところが、実際にはこの調査結果はすべて事実と異なっていた。02年以降も偽装が疑われる資料が残っていたが、確認する作業をしないまま「問題なし」として処理していた。99年から02年にかけて品種偽装が疑われるデータも残っていたが、取締役が部下に対してデータ削除を指示した。

 このとき、前社長は専務取締役になっていた。報道機関から直接取材を受けていなかったが、取材を受けた場合、「自分が種苗課長だったときに不正を知り、承認していた」と説明しようと考えた。対応にあたっていた常務や人事総務部長にメールでその考えを伝えた。常務は「これはダメですよ。ここまで正直に言うのは」とブレーキをかけ、取材を受けないよう忠告した。こうした経過は前社長と常務らとの当時のメールのやりとりで確認された。

不正の事実や経緯をメール復元で把握

 雪印種苗は偽りの調査結果を新聞記者に伝え、農林水産省にも報告した。親会社の雪印メグミルクに対して、報告内容のホームページでの掲載を検討すると伝えたが、結局掲載は取りやめ、新聞記事にもならなかった。

「第三者委員会報告書格付け委員会」の委員長を務める久保利英明弁護士=2018年7月3日撮影
「第三者委員会報告書格付け委員会」の委員長を務める久保利英明弁護士=2018年7月3日撮影

 今回、第三者委員会はメール等のデータ復元や関係者への聴取でウソをあぶり出した。第三者報告書を格付けする「第三者委員会報告書格付け委員会」(委員長・久保利英明弁護士)はこうした事実認定に高い評価をつけた。

 ただ、格付け委員会は、報告書について1点だけマイナス評価をつけた。それは「雪印種苗の親会社である雪印メグミルクに対する調査が不十分」という点だ。次回、詳しく報告する。

<次回「雪印種苗第三者委の親会社調査が「不十分」だった理由」>

編集部

編集部

長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
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