スキル・キャリアキャリアを築くヒント

「トラブル処理や尻ぬぐい」の経験がキャリアに生きる

細川義洋 / ITコンサルタント

 現在、私は経済産業省の政府CIO(内閣情報通信政策監)の補佐官として同省に勤めています。先日、同省のある職員が「大臣賞」という表彰を受けました。副賞などはありませんが、世耕弘成経産相から直接、表彰状を手渡されたそうです。官庁の職員として名誉なことでしょう。

職員が「大臣賞」を受けた理由

 印象的だったのは、受賞理由です。いくつか理由があったようですが、決定打となったのは、昨年発生した同省が運営する政府共通の情報システムトラブルの復旧対応でした。トラブルの詳細は述べませんが、通常、大臣賞といった表彰の対象は、これまでにない新たな政策を実現するなど、「ゼロをプラスにする」ような目立った活躍が評価されそうです。

 ところが、この職員は、「マイナスをゼロにする仕事」が評価されました。トラブルの発生時には、職員は不眠不休で対応にあたり、その後、システム開発企業に言いたくもない苦言を呈して再発防止策を立案し実行に移すなどしたそうです。その苦労は大変なものだったでしょう。

 この職員の活躍を評価した経産省の懐の深さを感じる表彰でもありました。こうしたケースは一般企業でも珍しいことではないでしょうか。

面接で時間をかけて説明したこと

 この表彰の話をきっかけに、私自身のキャリアを振り返ってみました。すると、節目節目で「マイナスをゼロにする」経験がいくつかありました。こうしたことがキャリアアップや転職の際に効いていたように思います。

 政府CIOの補佐官に応募した際の採用面接では、もっとも時間をかけて説明したのが、IT企業在籍時のプロジェクトマネジャーを務めた経験でした。

 担当したあるプロジェクトは、システム製作の実務を中国企業に任せていました。この中国企業の品質レベルが低く、また意思疎通もうまくいかずプロジェクトが破綻寸前の状況に追い込まれてしまいました。そこで中国企業の事務所がある大連に行き、品質を上げるための策や、現場の人たちのやる気を引き出す策を立てて実行し、何とか立て直したことがありました。

 また、営業の一般社員から主任へと昇進した時にも、「マイナスをゼロにした」仕事が評価されていました。上司からは昇進の理由の一つとして、「ITシステムの導入プロジェクトが失敗して関係が悪化した顧客に対し、粘り強く再提案を行い、再度受注したことを評価している」と言われました。

トラブル処理は経験が試される

 職場の面談や採用面接などで自分のした仕事を説明するとき、多くの人は新規顧客から受注したことや、新しい技術を取り入れたプロジェクトを成功させたことなど、ゼロをプラスにする仕事の実績に目を向けて主張しがちです。

 ただ、マイナスをゼロにする仕事もキャリアを築くための有効な武器になることがあります。トラブルの処理や後始末、他人の仕事の尻ぬぐいなどは、実は自分の腕や経験、技術が試される場面でもあるのです。こうした経験を積み重ねているのといないのとでは、スキルに大きな違いが出てきます。

 「マイナスをゼロにする」という視点で、自分の業務や職務の経歴を振り返ってみると、違った視点で自分の仕事を評価できるでしょう。

 <「キャリアを築くヒント」は毎週火曜日掲載です>

細川義洋

細川義洋

ITコンサルタント

1964年、神奈川県生まれ、立教大学経済学部経済学科卒。NECソフト(現NECソリューションイノベータ)、日本IBMでシステム開発やコンサルティングを行う。著書に「なぜ、システム開発は必ずモメるのか?」「IT専門調停委員が教える モメないプロジェクト管理77の鉄則」(日本実業出版社)などがある。

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