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6月賃金3.6%増 働き方改革の余波が表れただけ?

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
賃金は本当に上がっているのか(今年の春闘=3月14日、竹内紀臣撮影)
賃金は本当に上がっているのか(今年の春闘=3月14日、竹内紀臣撮影)

 6月の現金給与総額(パートを含む)が前年比3.6%増に上昇した。21年ぶりの高い伸び率だという。この上昇率には驚く。厚生労働省が8月7日に発表した毎月勤労統計調査によるものだ。だが、少し立ち止まって考えると、この基になっているデータは6月だ。ボーナスの支給が押し上げているのだと察しがつく。

 賃金の中で、正社員に当たるのは、パートを除く一般労働者の現金給与だ。正社員の賃金の前年比の伸びは、4月0.6%、5月2.1%、6月3.3%である。1~6月の平均は1.8%になる。それでも、2017年の平均0.5%よりはずっと高い。

 業種では、卸売・小売業が18年6月10.7%、製造業が同4.2%と伸びが高い(パートを含む)。卸小売りは人手不足だから従業員のつなぎ止めに賃金を多めに配分したことがわかる。製造業でも、春闘でベースアップをしない代わりに賞与で還元したといわれた。

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第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。