くらし人生に必要な「おカネの設計」

「普通預金と変動国債」で無リスク資産を積み上げる

岩城みずほ / ファイナンシャルプランナー

 資産運用をスタートすると決めた会社員のA太さん(36)は早速、具体的な投資・運用方法を検討し始めることにしました。運用では、自分の資産を長期的に安定して増やしていくことが大切です。働いて得た収入の一部を積み立て投資し、退職後は積み上がったお金を徐々に使い、生活していくことを目的としましょう。

 A太さんには、共働きの妻B代さん(36)と、4歳と1歳の子供がいます。夫婦の手取り年収は合わせて600万円で、現在約300万円の貯蓄があります。今後の人生でさまざまな支出が生じます。A太さんの場合、2人の子供の学費(各500万円)や、住宅購入の頭金として500万円と想定しています。こうしたお金は、積み立てた分から必要に応じて取り崩します。

生活費の半年から1年分を普通口座に

 では、「資産配分」の仕方を考えます。この部分は、お金の問題の「五つのステップ」の必要貯蓄率、自分のリスク許容度、に続く3ステップ目です。ポイントは、安定的に資産全体が増えていくよう、効率的に自分で管理することが大切です。手数料もリスクも高い投資商品の売買を証券会社の営業マンなどに任せっぱなしにしてはいけません。具体的には、次の三つのポイントがあります。

 一つ目のポイントは、生活費の半年から1年分(手取り年収のおおよそ半分)を、普通預金口座に置いておくことです。金融機関が破綻した場合に預金者へ払い戻しを保証するペイオフという制度の対象が、1金融機関1預金者あたり元本1000万円までとその利息なので、1口座1000万円を限度にしましょう。

 二つ目は、普通預金以外に現金があり、当面使う予定がなければ、元本割れしない「個人向け国債の変動10年満期(変動10年)」を持つことです。「変動10年」については後述します。

 そして三つ目が、自分のリスク許容度を判断した上でリスク資産を運用することです。この三つをバランスよく運用するようにします。

リスク運用と無リスク運用のバランスを

 普通預金は、いつでも出し入れ自由な「流動性」を重視したお金の置き場所です。「変動10年」は、絶対にお金を減らさないために「安全性」を重視した置き場所です。普通預金と変動10年は、リスクを取らない「無リスク運用」と位置づけます。一方、三つ目は収益を期待する「リスク運用」です。

 無リスク運用とリスク運用の配分のポイントは、リスク許容度を判断する数字「360」を使い、最悪の場合の損失を想定して決めることです(前回参照)。A太さんは、リスク運用は1080万円までと決めました。今後はリスク運用として、毎月iDeCo(個人型確定拠出年金)に2万3000円、つみたてNISA(少額投資非課税制度)に3万3000円の合計5万6000円を積み立てていきます。

 A太さんの毎月の必要貯蓄額は12万3000円でしたので、月6万7000円は無リスク運用です。現在約300万円の貯蓄があるので、無リスク運用としてはまず普通預金に資金を積み上げ、50万円たまるごとに「変動10年」を購入します。購入時期をずらすことで、満期償還の時期をずらせます。例えば子供の学費が必要なタイミングを見越して購入するとよいでしょう。

個人向け国債「変動10年」とは

 個人向け国債の「変動10年」について説明しておきましょう。

 国債は国が発行する債券です。その中で、個人限定で販売されているのが個人向け国債です。銀行、証券会社、ゆうちょ銀行などで、最低1万円から購入できます。個人向け国債は、毎月発行され、固定金利の「固定3年」「固定5年」、そして金利が変動する「変動10年」などの商品があります。

 「変動10年」は満期償還まで10年で、年率0.05%の最低金利が保証され、元本割れがありません。金利は半年ごとに見直されます。見直しの仕組みは、その時の「10年固定利付国債」の実勢金利×0.66です。

 発行(購入)から1年たてば、多少のペナルティーを支払う(※)ことで途中換金できます。実質的には元本を下回ることはありません。そして、国債なので銀行よりも安全▽金利が上昇すれば受取利子が増える▽0.05%の利回りが銀行の定期預金や長期国債利回りよりも高い──といった三つのメリットがあります。

 次回は、リスク運用や無リスク運用をする上で大切な「72の法則」などについてお伝えします。

(※)ペナルティーを支払う:途中換金の直前2回分の各税引き前利子相当額×0.79685が差し引かれます。詳しくは、財務省のホームページをご覧ください。

 <「人生に必要な『おカネの設計』」は原則月2回掲載します>

岩城みずほ

岩城みずほ

ファイナンシャルプランナー

CFP認定者、オフィスベネフィット代表。NHK松山放送局を経て、フリーアナウンサーとして14年活動。その後セミナー講師、生命保険会社を経て2009年に独立。個人相談のほか、貯めると増やすの車座の会「C(貯蓄)リーグ」、良質なマネーの勉強会「サムライズ」主催。著書に「人生にお金はいくら必要か」(山崎元氏と共著・東洋経済新報社)などがある。

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