「自傷」は随分前から、若者の間でありふれた現象となっている。自殺以外の意図で自らの身体を傷つける行為を指し、よく知られているのはリストカットだ。私の調査では、10代の1割に自傷経験があり、そのうちの約6割は10回以上繰り返しているとの結果が出ている。

 自傷ほど誤解されている行為もない。いわく「甘えている」「弱い」「人の気をひこうとしている」。だが違うのだ。自傷の主な目的は、怒りや不安、絶望感といったつらい感情を和らげることにある。そして、自傷する人の96%は一人きりの時に実行し、それを誰にも告げない。つまり自傷とは、周囲の関心をひくのとは正反対、むしろ困難な状況を独力で生き延びるための行動なのだ。

 こうも言える。自傷する人は「人は必ず裏切る。でもリストカットは絶対に裏切らない」と信じ込んでいる。…

この記事は有料記事です。

残り552文字(全文905文字)

松本俊彦

松本俊彦

国立精神・神経医療研究センター部長

まつもと・としひこ 国立精神・神経医療研究センター病院精神科医師、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長、精神保健指定医、精神保健判定医、精神神経学会精神科専門医・指導医。

イチ押しコラム

人類史からひもとく糖質制限食

糖質含むカロリー制限食では糖尿病を防げない?

 福岡県久山町は、福岡市の東に隣接する人口約9000人の町です。九州大大学院のチームが1961年以来、40歳以上の町民を対象に脳卒…

無難に生きる方法論

高齢化で深刻さ増す「心疾患の終末期ケア」

 私の専門分野である循環器科をめざす若い医師が減っているという。循環器科の治療対象は心血管の病気、いわゆる心筋梗塞(こうそく)や大…

旅と病の歴史地図

「海外出張183日」高裁が過労死を認めた理由

 ◇首相の外遊は過重労働? 政治家の海外出張を「外遊」と呼びます。その字を見ると遊びのようにとられますが、この「遊」は「旅」を意味…

超高齢化時代を生きるヒント

「痛みと医療費」二重に苦しむ若年がん患者たち

 高齢化社会をどう生きるか、高齢化社会を支える仕組みが今後どうなるのか--本連載はこれらを中心にお伝えしていますが、若い人から「高…

医をめぐる情景
ドクターヘリで搬送され、救命救急センターに移される負傷者=ドラマのロケ地でもある千葉県印西市の日本医科大千葉北総病院で

障害があっても強く生きる患者と、勇気もらう医師

 ◇ドラマ「コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-」第3シーズン(2017年) 事故で突然、大切な身体機能を失うことがある。不意に…

Dr.林のこころと脳と病と健康

演技性パーソナリティー障害のうそが肥大する土壌

 ◇うそつきは病気か【5】 自分を実際よりよく見せるためにうそをつくのは、誰でもある程度までならすることです。ではそういう普通の人…

Dr.米井のアンチエイジング・セルフチェック チャートでわかる、あなたの機能年齢 北海道大学COI×医療プレミア