健康に暮らすつまみ食い栄養学

伝統食品で理想の腸内環境を

川端輝江 / 女子栄養大学教授

 大腸の中には、たくさんの腸内細菌がすみついています。実に1000種類以上、総重量は1〜1.5kgというから驚きです。

 私たちが食べて消化吸収されなかった食品成分を、腸内細菌はエネルギーとして利用します。腸内にはいろいろな菌がいますが、中でも人にとって有用な「善玉菌」である乳酸菌やビフィズス菌は、食品成分を利用して乳酸や酢酸を産生します。このような働きで腸内環境は酸性状態となり、好ましくない「悪玉菌」の増殖を抑えるとともに、便秘や下痢を改善し、感染症や大腸がんに対する免疫機能を高めるのです。

 そこで、健康のために、腸内細菌の好むえさの供給や、時には善玉菌そのものの補充が必要になってきます。食品業界では「プレバイオティクス」「プロバイオティクス」という二つの効果のある食品の開発が盛んです。プレバイオティクスは、消化吸収されずに大腸まで到達し、腸内細菌のえさになる食物成分のこと。プロバイオティクスは、生きて腸まで届く菌のことを言います。消化されにくいオリゴ糖と、腸まで届く乳酸菌の両方を含んだヨーグルトなどは、まさに「プレ&プロバイオティクス効果」を狙った食品です。

 消化されにくい食物繊維も、プレバイオティクスとして理想の腸内環境づくりに貢献します。ところが戦後、日本人の食物繊維の摂取量は激減し、現在では目標量(成人で1日18〜20g以上)の7割程度しか取られなくなりました。食物繊維を多く含む食品は、穀類(玄米、雑穀など)▽野菜(ゴボウ、オクラ、レンコンなど)▽イモ(サツマイモ、ヤマイモなど)▽豆(大豆、小豆など)▽果物(リンゴ、バナナなど)▽海藻(ひじき、昆布、めかぶなど)▽キノコ(シイタケ、シメジなど)。古くから私たちが慣れ親しんできた食品ばかりです。

 さらに、日本人は昔から発酵食品を巧みに利用して和食文化を育ててきました。ぬか漬けには乳酸菌が多く含まれ、納豆、みそ、しょうゆなども大豆の発酵に善玉菌が関わります。プレ&プロバイオティクス効果が期待される伝統的食品を、未来へ大切に継承していきたいものです。

(毎日新聞2015年11月19日掲載)

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川端輝江

川端輝江

女子栄養大学教授

かわばた・てるえ 女子栄養大学栄養学部基礎栄養学研究室教授

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