運動で五十肩を早期改善する【前編】

 中年に多い五十肩。放置しておいても大丈夫といわれますが、そうともいえません。五十肩と思っていたら「腱板(けんばん)断裂」だったというケースも、少なからずあるからです。五十肩の原因や診断のポイントについて紹介します。

痛みの原因は不明

 五十肩の正式名称は「肩関節周囲炎」です。肩関節が硬くなって正常に動かなくなり、痛みなどが起こるもののうち、骨折や脱臼、あとで詳しく説明する腱板断裂といった明らかな原因がみられないものをいいます。

 五十肩という名称は発症年齢が50代に多いからであり、四十肩と呼ぶこともあります。ただし、実態調査が行われていないため、発症年齢や患者数などの詳細は明らかではありません。また、原因も明らかではなく、X線やMRI(磁気共鳴画像化装置)などの画像検査でははっきりした異常が見つかりません。専門家の間では五十肩の原因として患部の炎症や免疫反応、筋肉のバランスの崩れなど、さまざまなことが指摘されていますが、明確ではないのです。

 ただ、心配するような病気でないことははっきりしています。個人差は大きいものの、五十肩は数カ月から数年たつと、やがて自然に治っていきます。病院には行かずにやり過ごすことができた、という方がいるのもこのためです。

自然治癒しない腱板断裂

 しかし、念のために一度、整形外科を受診したほうが安心でしょう。というのも、五十肩と思っていたものが実は腱板断裂だったというケースがあるからです。

 腱板は肩の関節を安定させる働きを持った筋肉の総称です。これらの筋肉の一部は肩関節と骨の間を通っており、使い過ぎによって擦れることがあります。また、老化によっても腱が弱くなり、亀裂が入ることがあります。こうした状態が腱板断裂で、症状は五十肩と非常によく似ています。しかし、腱板断裂の場合は自然治癒しないこともあり、完全に断裂してしまった場合、手術が必要になることもあります。このため、早期発見が重要です。

 一方、本当に五十肩だった場合は、肩の動かしにくさとともに痛みがつらいという方が多いのです。これを改善するための方法としては、鎮痛薬や湿布などがあります。また、早期に改善するための方法としては、体操がすすめられます。肩関節の周囲を適切な方向に動かすと、痛みが改善されることが多いからです。また、頸椎(けいつい)症が引き金となって五十肩の痛みが起こっている場合、首の体操を行うことで痛みがよくなる人もたくさんいます。

 次回は、実際の運動療法(リハビリ)について詳しく紹介します。【聞き手=医療ライター・狩生聖子】

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銅冶英雄

銅冶英雄

お茶の水整形外科機能リハビリテーションクリニック院長

どうや・ひでお 1994年日本医科大学卒業後、千葉大学付属病院、成田赤十字病院、国立がんセンター中央病院、千葉県立こども病院、千葉リハビリテーションセンターなどで勤務。豪州ベッドブルック脊椎ユニット留学などを経て、2010年、お茶の水整形外科機能リハビリテーションクリニック(東京都)を開院。その間、04年には国際腰椎学会日本支部賞、05年には国際腰椎学会・学会賞を受賞した。20歳の頃からぎっくり腰を繰り返し、腰痛がくせになっていた体験を生かし、運動療法、靴、栄養療法を組み合わせて体の痛みを根本的に取る治療法を考案してきた。医学博士、米国公認足装具士。著書に「腰の脊柱管狭窄症が革新的自力療法痛みナビ体操で治った!」(わかさ出版)、「頸椎症を自分で治す!」(主婦の友社)、「腰・首・肩の激痛がみるみる消える!奇跡の自力療法『背中ほぐし体操』」(宝島社)など多数。

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