健康に暮らす人類史からひもとく糖質制限食

100年前に導入されていた糖質制限食〜米国糖尿病食事療法の変遷

江部康二 / 高雄病院理事長

 今回は、米国における糖尿病食事療法の変遷を20世紀初頭から現代に至るまで、インスリンの発見、飢餓療法、糖質制限食といったキーワードをもとに、それぞれの時代背景を振り返りながら、考察してみます。

インスリン発見以前 糖尿病治療食=糖質制限食

 インスリンが発見されたのは1921年です。それ以前、20世紀(1900年代)初期の米国で、糖尿病患者に治療食として提供されていたのは、意外に思われるかもしれませんが、主に糖質制限食でした。それもほぼ3食とも主食を抜く「スーパー糖質制限食」です。おそらくヨーロッパでも同様だったのではないかと思います。背景にはこのころすでに「食後血糖値を上昇させるのは、3大栄養素のなかで主として糖質である」という事実が認識されていたからです。例えば、糖尿病学の父と呼ばれるエリオット・ジョスリン医師が執筆した「ジョスリン糖尿病学」の初版は1916年の刊行ですが、炭水化物は総摂取カロリーの20%が標準と記載しています。

 当時は血糖値を測定することはまだあまり一般的ではなく、もっぱら尿糖(血液から尿中に排出された糖の量…

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江部康二

江部康二

高雄病院理事長

えべ・こうじ 1950年生まれ。京都大学医学部卒業。京都大学胸部疾患研究所(現京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学)などを経て、78年より医局長として一般財団法人高雄病院(京都市)に勤務。2000年理事長に就任。内科医、漢方医。糖尿病治療の研究に取り組み、「糖質制限食」の体系を確立したパイオニア。自身も02年に糖尿病であることが発覚し、実践して糖尿病と肥満を克服する。これまで高雄病院などで3000人を超える症例を通じて、糖尿病や肥満、生活習慣病、アレルギーなどに対する糖質制限食の画期的な治療効果を証明し、数々のベストセラーを上梓している。

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