健康に暮らす人類史からひもとく糖質制限食

「厳重食」漱石も食べた100年前の糖質制限食

江部康二 / 高雄病院理事長

近現代日本における糖尿病食の歴史【1】

 今回は日本の糖尿病食の歴史を、約100年前の大正時代にさかのぼって考えてみたいと思います。意外かもしれませんが、大正時代の最先端の糖尿病食事療法は「厳重食」と呼ばれたスーパー糖質制限食でした。

夏目漱石と糖尿病と厳重食

 文豪・夏目漱石(1867~1916年)は、糖尿病でした。「漱石全集」(岩波書店)に収められた漱石の書簡や、鏡子夫人の述懐を記した「漱石の思い出」(文春文庫)など(注1)によると、16(大正5)年正月、右の上膊(じょうはく=上腕)神経に強い痛みと右上膊の不全まひが出現しました。薬、マッサージは効果がなく、同年4月、糖尿病と診断されました。

 5月から、愛媛県尋常中学(旧松山中学)時代の教え子の医師、真鍋嘉一郎により、当時の最先端治療の「厳…

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江部康二

江部康二

高雄病院理事長

えべ・こうじ 1950年生まれ。京都大学医学部卒業。京都大学胸部疾患研究所(現京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学)などを経て、78年より医局長として一般財団法人高雄病院(京都市)に勤務。2000年理事長に就任。内科医、漢方医。糖尿病治療の研究に取り組み、「糖質制限食」の体系を確立したパイオニア。自身も02年に糖尿病であることが発覚し、実践して糖尿病と肥満を克服する。これまで高雄病院などで3000人を超える症例を通じて、糖尿病や肥満、生活習慣病、アレルギーなどに対する糖質制限食の画期的な治療効果を証明し、数々のベストセラーを上梓している。

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