熊本地震の被災者に向けたセルフケアを紹介するボディトレーナーの八田永子さん=吉永磨美撮影
熊本地震の被災者に向けたセルフケアを紹介するボディトレーナーの八田永子さん=吉永磨美撮影

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避難所でも簡単 エコノミークラス症候群予防のセルフケア

吉永磨美 / 毎日新聞 医療プレミア編集部

 熊本地震は4月14日の発生から半月が過ぎた現在も依然活発な余震活動が続き、多数の人が避難所や車中泊で不自由な生活を強いられている。避難生活で注意すべき疾患の代表格が「エコノミークラス症候群」だ。死に至ることもあるこの病気を防ぐため、避難中でもできるセルフケア法を専門家に聞いた。

狭い場所でもできるセルフケア

 「硬くなった筋肉をほぐすことで、血液の流れがよくなります。筋肉をもまずに、押すようにケアしてください」。体幹トレーニングや柔軟などを指導する「ボディトレーナー」の八田永子さんは、エコノミークラス症候群防止のセルフケアのポイントをそう説明する。

エコノミー症候群防止のセルフケア。骨に沿って、ひじを使ってふくらはぎを押していく=吉永磨美撮影
エコノミー症候群防止のセルフケア。骨に沿って、ひじを使ってふくらはぎを押していく=吉永磨美撮影

 エコノミークラス症候群は、長時間体を動かさずじっとしていることで、足の深部にある静脈の血流が悪くなって生じた血のかたまり(深部静脈血栓)が肺の血管を塞ぐことで起きる。熊本県の集計では、2日午前9時時点で2万人以上が避難所に身を寄せているほか、屋内での生活に不安を感じて車中泊をしている被災者もいる。エコノミークラス症候群を予防するためには定期的な運動が大切だが、避難所や車の中では思うように体を動かすことができないことも多い。八田さんの紹介する方法は、そうした狭い場所でも無理なくできる。

 セルフケアを行うタイミングは、「一日の中で、できる時に、できるだけ」でいいという。それぞれの動作のポイントを説明する=動画参照。

ふくらはぎのケア1

座りながら、骨に沿うように、足のかかとを使ってふくらはぎを押す。筋肉をもまないのがポイント=吉永磨美撮影
座りながら、骨に沿うように、足のかかとを使ってふくらはぎを押す。筋肉をもまないのがポイント=吉永磨美撮影

 あおむけに寝転がり、片方の脚だけ膝を曲げて立てる。曲げた脚の膝の上に、もう一方の脚のふくらはぎを乗せて上下に動かす。立てた膝のお皿の骨が、ふくらはぎを軽く押すようにするのがポイントだ。脚を入れ替えて両方の足に同じことを行う。寝転がらずに、椅子に座って行ってもいい。

 寝ても座っても、自由な姿勢でかまわないので、ふくらはぎにある骨の近くを押す。ここでも筋肉をもむのではなく、1点を押していく点圧という方法で行うことに注意。押す点は骨に沿って、少しずつ移動させていく。手の親指を使うのが簡単だが、かかとやひじを使ってもいい。

ふくらはぎのケア2

 片方の膝を立てた状態で床に座る。足首あたりから、ふくらはぎの骨に沿って、軽く握った手の指の第2関節(手のひらに近い方の関節)部分を押し当て、上(膝の方向)に向かってスライドさせる。足首から膝への一方通行で行うことが大切。入浴中にせっけんをつけたり、入浴後にクリームをつけたりして、行ってもよい。

「呼吸」で緊張をほぐす

 八田さんは、避難所などでの生活では、常に全身が緊張してしまうことを指摘する。それをほぐすために大切なのが「呼吸」だ。被災者は下を向きがちになり、背中が丸くなったまま全身が固まってしまいがちだ。「狭くて慣れない空間で生活していると、ゆったりと息を吸ったりすることもなかなかできないはず」と、セルフケアと同時に「大きく手を広げて体全体で呼吸をすることを意識してもらいたい」と話す。また、「緊張で過呼吸になるケースもあるので、その際はなるべく息を吐く方を大きくし、吐くと吸うを2対1の割合で行うよう心がけてほしい」とアドバイスする。

   ×   ×   ×

はった・えいこ ボディ・アドバイザー&トレーナー/studio MOVE主宰、2014、15年度日本オリンピック委員会体操競技強化スタッフ(医・科学スタッフ)。青森県八戸市出身。ダンス教師、文化庁芸術家国内研修員を経て、西田堯舞踊団に所属。バレエ解剖学などを学び、07年からトレーナーとして指導を始める。ケアコンディショニング▽柔軟性向上▽身体の使い方▽コアトレ(体幹トレーニング)▽バレエ▽ダンス--などを指導する。また、それぞれの要素を入れた複合的な指導も行っている。独自の手法として、「ほぐれッチ」「ハンモックストレッチ&コアトレ」を考案。近年はシンクロナイズドスイミングと女子新体操のナショナルチーム、体操競技、フィギュアスケートなど審美系スポーツのほか、バレーボール、陸上、ゴルフ、テニス、野球、重量挙げなどのトップアスリートへ指導を行っている。

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吉永磨美

吉永磨美

毎日新聞 医療プレミア編集部

よしなが・まみ 1972年生まれ。98年に毎日新聞社入社。横浜支局、東京本社地方部、社会部、毎日RT編集部、生活報道部などを経て、2016年4月からデジタルメディア局。近年は、「おんなのしんぶん」を担当しながら、難聴など見えない障害や女性をテーマに記事を執筆してきた。

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