診断学は時空を超える【1】

 あたりまえのことですが、昔も病気はありました。現代のような医学知識、医療技術がなかった頃はどのように病名をつけていたのでしょう。

怨霊に苦しめられて死んだ光源氏の正妻

 約1000年前の平安時代中期に書かれた「源氏物語」には、中心人物が怨霊(おんりょう)に苦しめられる話が出てきます(怨霊は「夕顔」「葵」「若菜下」「柏木」の各巻に登場します)。源氏物語は架空の物語ではありますが、そこに描かれているのは、当時の貴族の風俗、生活、常識です。「怨霊」の話も、現代の私たちから見れば単なる怪談話ですが、平安時代の貴族たちにとっては、リアルで身近な現実の話であったのです。とりわけ「葵」の巻では、怨霊はドラマティックに登場します。

 光源氏の正妻で、妊娠中の葵の上は、賀茂祭(葵祭)に車で出かけます。車争い(見やすい場所の取り合い)…

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津村圭

津村圭

府中病院総合診療センター長

つむら・けい 大阪府出身。1977年大阪市立大学医学部を卒業後、国立循環器病センター(現・国立循環器病研究センター)に心臓内科レジデントとして勤務。その後の28年間は大阪市立大学医学部教員として、学部学生、大学院学生、研修医、指導医、教員の指導と医学部カリキュラムの企画と作成に携わった。診療面では循環器内科をベースとしつつ、早い時期から原因疾患の判別が困難な症例で、診断を担当する総合診療医として従事。研究面では、各種疾病のリスクファクターについての臨床疫学研究を行い、ランセット(Lancet)など欧米医学誌で発表してきた。2014年1月から現職。総合診療医として地域医療に関わるとともに、初期、後期研修医の指導を担当、臨床研修室顧問も兼任する。地域医療を充実させるため院内に家庭医療専門医後期研修プログラムを立ち上げるなど、診療と教育をリンクさせた活動を現在も続けている。府中病院ウェブサイト

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