
あり得ないことを“確信”する「妄想性障害」という病【7】
人には夢があります。希望があります。なりたい自分があります。それは未来の自分ですが、今の自分がまさにそうだと確信するのが、誇大妄想です。
ノーベル賞候補、そして芸能人との結婚
大学院で同期だった友人のことです。彼女は一流の国立大学出身ということもあり、とても聡明(そうめい)な女性でした。その後別々の研究所で働いてきましたが、連絡はずっと取り合ってきました。その彼女が、「自分はノーベル賞候補になっている」と言うのです。そのために有名人になってしまい、全世界からマークされて悩んでいるとも打ち明けられました。そしてつい最近、彼女は職を失ってしまいました。「自分にアメリカの大学から教授としてのオファーが来ているのに、自分を手放したくないためにそれを隠している」と上司を責め立ててしまったためです。
以来、ほぼ毎日のように、私のところへメールや電話が来ます。上司は自分の才能をねたんであれこれ妨害工…
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林公一
精神科医
はやし・きみかず 精神科医、医学博士。著書に「統合失調症という事実」「擬態うつ病/新型うつ病」「名作マンガで精神医学」「虚言癖、嘘つきは病気か」など。ウェブサイト「Dr.林のこころと脳の相談室」は、読者からの質問に林医師が事実を回答するもので、明るい事実・暗い事実・希望の持てる事実・希望の持てない事実を問わず、直截に回答するスタイルを、約20年にわたり継続中。