Dr.林のこころと脳と病と健康

認知症が招き入れた「幻の同居人」

林公一・精神科医
  • 文字
  • 印刷
絵=画家・絵師 OZ-尾頭-山口佳祐(http://oz-te.com)
絵=画家・絵師 OZ-尾頭-山口佳祐(http://oz-te.com)

妄想をめぐって【2】

 前回の「物盗(と)られ妄想」に続いて、認知症でよく見られる妄想をもう一つご紹介しましょう。それは「幻の同居人」と呼ばれるものです。お母様(80代)の奇妙な言動についての、次女(40代)の方のお話です。

 母は40代の長男(私の兄)と2人暮らしです。父は何年も前からリハビリ施設に入所しています。母は認知症というほどではないのですが、年のせいか少しだけぼけてきており、また、足腰が弱ってきたのでほとんど家の中で過ごしています。それでも家事は兄の助けを借りつつ、不十分ながらある程度はやっていました。ところがある日、やかんでお湯を沸かしているのを忘れて空だきし、危うく火事になりかけたことがありました。それで兄がとてもきつく叱ったのですが、それから後にだんだん母の様子がおかしくなってきたようなのです。

 いちばん変だと思うのは、母の部屋は1階なのですが、2階との間に実際にはない中2階があり、そこに知ら…

この記事は有料記事です。

残り1949文字(全文2358文字)

林公一

精神科医

はやし・きみかず 精神科医、医学博士。著書に「統合失調症という事実」「擬態うつ病/新型うつ病」「名作マンガで精神医学」「虚言癖、嘘つきは病気か」など。ウェブサイト「Dr.林のこころと脳の相談室」は、読者からの質問に林医師が事実を回答するもので、明るい事実・暗い事実・希望の持てる事実・希望の持てない事実を問わず、直截に回答するスタイルを、約20年にわたり継続中。