前回は、肺がんとたばこの関係をお話しし、疫学データ(人を集団で観察した場合)と個人の運命(個人・個体で観察した場合)とは異なる場合があるというお話で終わりました。今回は両者がなぜ異なるのか、その理由を説明しましょう。

アンジェリーナ・ジョリーさんの予防切除

 最初に、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんの例をみてみましょう(注1)。アンジェリーナさんは、遺伝子検査の結果、「BRCA1」あるいは「BRCA2」というがん抑制遺伝子のうち「BRCA1」に生まれつき変異を持っていることが分かり、「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」が疑われました。そこで、将来の乳がん発症予防のために両方の乳房を切除し、続いて、卵巣がん発症予防のために卵巣も切除したと報道されています。実際、アンジェリーナさんの母親は若くして乳がんで亡くなったそうなので、同じ遺伝子変異を持っていたのかもしれません。アンジェリーナさんは、遺伝子検査で自分も同じ病気になる可能性があることを知り、大いに悩んだことでしょう。乳房、卵巣の切除という決断には、相当な勇気と決意が必要だったと思います。

この記事は有料記事です。

残り2251文字(全文2735文字)

和田裕雄

和田裕雄

順天堂大学准教授

わだ・ひろお 1993年、東京大学医学部卒。東京大学医学部付属病院、東京大学医科学研究所、英国Imperial College London留学、杏林大学付属病院呼吸器内科学教室などで、特に閉塞性肺疾患、慢性呼吸不全などの呼吸器疾患に焦点を当てて診療・研究・教育に携わってきた。2014年より順天堂大学公衆衛生学講座准教授として、予防医学や産業医学の分野で地域や働く人たちの健康管理にも目を配っている。医学博士、内科学会専門医、呼吸器学会専門医、老年医学会専門医。

イチ押しコラム

実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-
HPVワクチンについて議論する県議会を見つめる母親たち

HPVワクチン「推奨派敗訴」と接種の是非は別問題

理解してから接種する--「ワクチン」の本当の意味と効果【37】 HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンに関連して、国内外の関係者…

理由を探る認知症ケア
 

「家に帰りたい」は単なる帰宅願望ではなかった!?

 ◇「家に帰りたい」と言い続けるB子さん 最愛の夫を亡くしたことをきっかけに、認知症による混乱が増えてしまったB子さん。子どもたち…

ボストン発 ウェルエイジング実践術
玄米ごはん定食。論文によると、日本の食事で、死亡に影響している問題点は、1位が塩分過剰、2位は全粒穀物(玄米など)の不足だった

年1100万人を死なせる世界「不健康な食事」ランク

 全世界で年間1100万人、成人してから亡くなる人の5人に1人が、不健康な食事が原因で亡くなっている。喫煙や高血圧による死者より多…

無難に生きる方法論
 

「うつ病に効果あるかも」お笑いと健康の関係は

 明るく楽しく過ごすことが健康につながり、がんや高血圧、糖尿病の治療に良い効果があることはよく知られている。例えばがんと診断され、…

超高齢化時代を生きるヒント
東京都福生市の公立福生病院=2019年3月8日、本社ヘリから

「命は誰のものか」を深く問いかける透析中止問題

 人工透析を受けていた44歳の女性患者が、東京都福生市の公立福生病院の医師に透析中止の選択肢を示され、中止を選んだ後、死に至りまし…

Dr.米井のアンチエイジング・セルフチェック チャートでわかる、あなたの機能年齢 北海道大学COI×医療プレミア