健康に暮らすみんなの心と体 癒やして守るヒント

HOT患者の働き方を制限する社会のバリアー

和田裕雄 / 順天堂大学准教授

慢性呼吸不全患者の生活【後編】

 前回は、慢性呼吸不全を患い在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy :HOT)で治療中の患者さんの苦しみについてお話ししました。今回はHOTを受ける患者さんの仕事・就業に焦点を当てて考えてみます。

HOT患者の低い就業率

 私は2015年まで、前職の大学病院の外来で呼吸器疾患の患者さんを診察していました。当時、多くの患者さんから、HOTは「見かけが悪い」「常に鼻にカニューラ(チューブ)を装着し、酸素供給機器を携行しているのは面倒だ」「2台目の酸素ボンベ設置は保険適応外で、また場所も取るため、職場に酸素ボンベを持って行くことができない」などと訴えられました。その度に、低酸素状態や間欠的低酸素状態(酸素濃度が低下したり正常レベルに戻ったりを繰り返す状態)が健康へ及ぼす影響、HOTの有効性を説明して理解を求めてきました。

 しかし、仕事については、本音では「病人に仕事をさせるなんて、とんでもないことだ。休ませてあげられる…

この記事は有料記事です。

残り2211文字(全文2643文字)

和田裕雄

和田裕雄

順天堂大学准教授

わだ・ひろお 1993年、東京大学医学部卒。東京大学医学部付属病院、東京大学医科学研究所、英国Imperial College London留学、杏林大学付属病院呼吸器内科学教室などで、特に閉塞性肺疾患、慢性呼吸不全などの呼吸器疾患に焦点を当てて診療・研究・教育に携わってきた。2014年より順天堂大学公衆衛生学講座准教授として、予防医学や産業医学の分野で地域や働く人たちの健康管理にも目を配っている。医学博士、内科学会専門医、呼吸器学会専門医、老年医学会専門医。

イチ押しコラム

無難に生きる方法論

原因不明の頭痛・腰痛と「釣り」の微妙な関係

 私の男性更年期外来には、頭痛や腰痛が続き、どの病院に行っても原因がわからず、対症療法をしてもいっこうに症状が良くならない患者さん…

医をめぐる情景

「失恋でうつ」の友人を励ますのはいけないこと?

 ◇楽曲「元気を出して」(1984年) 竹内まりやが作り、歌った「元気を出して」は、失恋して落ち込んだ女友だちを女性が励ます歌だ。…

人類史からひもとく糖質制限食

「正常範囲内の高血糖」でも全がんリスクが高まる

 国立がん研究センターがん予防・健診研究センター・予防研究グループが2015年、興味深い論文を発表しました。翌年には英文医学雑誌に…

旅と病の歴史地図
海外に出国する人たちでにぎわう出発ロビー=成田空港で2018年8月10日午前10時9分、小川昌宏撮影

旅先でつらい「旅行者下痢症」を薬で止めていい?

 海外旅行中に起こる下痢を「旅行者下痢症」と呼びます。発展途上国に1カ月間滞在すると半数近くの旅行者がかかるとされており、頻度が大…

超高齢化時代を生きるヒント

アルバイト医師が回す「在宅医療クリニック」の闇

 医学部5年生だった1989年の夏休み、私は実家近くにあるM先生のクリニックで1週間の実習をしていました。晴れて暑い水曜日の午後、…

Dr.林のこころと脳と病と健康

演技性パーソナリティー障害のうそが肥大する土壌

 ◇うそつきは病気か【5】 自分を実際よりよく見せるためにうそをつくのは、誰でもある程度までならすることです。ではそういう普通の人…

Dr.米井のアンチエイジング・セルフチェック チャートでわかる、あなたの機能年齢 北海道大学COI×医療プレミア