実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-

62人死亡? 比デング熱ワクチン導入の“失敗”

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
  • 文字
  • 印刷

「世界一恐ろしい生物=蚊」の実態を知る【15】

 フィリピン人はフランスの製薬会社のギニーピッグ(実験台)にされた--。

 これは私がフィリピン人の知人から直接聞いた言葉です。「ギニーピッグ」とは穏やかな言葉ではありません。ですが、フィリピンの世論は現在、あるワクチンを巡って緊迫した状態が続いています。

 そのワクチンとは、フランスの製薬会社サノフィ・パスツール社(以下「サノフィ社」)製のデング熱ウイルスのワクチン「Dengvaxia」です。このワクチンがフィリピンの一部の地域の子供たちの間で定期接種(予防接種プログラム)に加わったという話はこの連載でも伝えました(「世界で流行デング熱 改めて蚊対策を考える」)。その連載でも、フィリピンの一部の医療者は副作用が少なくないことや発症を完全に防げるわけではないことを理由にワクチン導入に反対していたことを紹介しました。そして、不幸なことにこの「懸念」が現実となってしまいました。

この記事は有料記事です。

残り1942文字(全文2355文字)

谷口恭

太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト