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人生の「店じまい」と友人との「別れ方」について

石蔵文信・大阪大学招へい教授
 
 

 人生にも「店じまい」があることを知っていますか。徐々に仕事や対外的な活動が減り、自分のやるべきことだけが残る。前立腺がんを患う石蔵文信・大阪大招へい教授は現在、そのような状況になり、「人生にも『店じまい』が必要」と考えます。人との「別れ」についても、友人の葬儀には参列しないことにしたそうです。その真意を語ります。

講演会がほとんどなくなった

 ロシアのウクライナ侵攻など、暗い話題が多い春になりました。私の生活も大きく変わりつつあります。まずコンサルタントや産業医をしていた会社との契約が今年3月でほぼ終了しました。私の体調のこともありますが、おそらく会社の経営上の問題もあって、契約を終えることになったと思います。

 2年前に私の病気が分かった後、新型コロナの流行が始まりました。その影響で、私の主な仕事であった講演会がほとんどキャンセルになりました。体調もあまり良くなかったので、講演会がなくなったことは良かったと思っています。

 現在も、吐き気や下痢で悩まされることが多く、60~90分の講演をするのはなかなか大変です。…

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大阪大学招へい教授

いしくら・ふみのぶ 1955年京都生まれ。三重大学医学部卒業後、国立循環器病センター医師、大阪厚生年金病院内科医長、大阪警察病院循環器科医長、米国メイヨー・クリニック・リサーチフェロー、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻准教授などを経て、2013年4月から17年3月まで大阪樟蔭女子大学教授、17年4月から大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。01年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設、性機能障害の治療も専門的に行う(眼科イシクラクリニック)。夫の言動への不平や不満がストレスとなって妻の体に不調が生じる状態を「夫源病」と命名し、話題を呼ぶ。また60歳を過ぎて初めて包丁を持つ男性のための「男のええ加減料理」の提唱、自転車をこいで発電しエネルギー源とする可能性を探る「日本原始力発電所協会」の設立など、ジャンルを超えたユニークな活動で知られる。「妻の病気の9割は夫がつくる」「なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか エイリアン妻と共生するための15の戦略」など著書多数。