◇改革拒む「政官の不可侵条約」
勝間 でも、年金が少なくなったり、もらえなかったりして困るのは弱者です。そこについての認識がないというのが国家としての問題という理解なんですが。
長妻 私の部屋に社保庁の地方の幹部が来られた。「共済年金も社保庁がやっていたとすれば、こんなずさんなことはやらなかった」とざんげされていた。自分たちの共済は、別団体で管理しており、ちゃんと守られ、紙台帳も1枚も捨てられていなかった。一方、国民年金の紙台帳の大半を占める普通台帳はほとんど捨てられました。日本は官僚だけ特別という制度がたくさんあるんですが、別枠にすると必ず国民側の方がいいかげんになって、自分たち官僚を対象とした方はちゃんとやる。官僚は全部いい加減というのでなくてメリハリつけていい加減。そこで官民の年金を一本化することが大事だと言っているのです。
勝間 全世界共通で官僚は放っておくとさぼるものだと思います。それに対するチェック機能が国民であり政治家なのですが、日本はどうも両方とも弱いような気がします。

長妻 英国も議院内閣制ですが、官僚を常にチェックするよう工夫していて、国会議員が119人政府の中に入り、チームで監督している。日本の場合は、長年の一党支配の中で、官僚と政治家の相互不可侵条約のようなものが結ばれている。つまり、政治家は官僚の中の人事はいじらない。だけど地元への利益誘導に官僚は協力してほしい、という下心がある持ちつ持たれつの関係になっている。政治家が政策立案を官僚に丸投げしているうちに母屋を乗っ取られている。私が初当選して一番驚いたのは、議員会館の下でバッジをつけた人が深々とお辞儀している。誰だろうと思ったら建設省の幹部ですよ。国会議員が官僚に陳情する力関係なんですよ。
勝間 政治家と官僚が結託している。
長妻 日本では、大臣に実質的人事権がなく、以前、防衛相が、事務次官の首を切ろうとしたとき、大臣も交代せざるを得なくなったということもあった。それでは組織として持たない。今、大臣に人事権を持たせようとしているということで大騒ぎになっている。公務員制度改革が重要だ。
勝間 公務員制度改革も、東洋大教授の高橋洋一さんによればかなり骨抜きにする動きが出ている。
長妻 一番悪いのは上司である政権政党。不祥事を起こした会社の記者会見でも、社長が出てきて「私は悪くない。部長連中がとんでもなくて不祥事を起こした」といったとしたら噴飯ものでしょう。大臣が「社保庁が悪い」と言うのも、手綱を握ることができていない与党の不明を恥じなくてはならない。もうひとつは相互不可侵条約を長年やってきて、官僚の出世の基準までも官僚任せにしてしまった。その基準は天下り団体をいっぱい作ったら出世できる、いらない規制をいっぱい作って部署を増やすと出世できる、予算をあまらせずに全部使うと出世できる。逆に、先輩の作った今の制度を批判しちゃだめだと。役所が膨張する方に働く仕組みです。
勝間 まさしくその膨張が、一般企業でいう「売り上げ」にあたるのですね。
長妻 普通の国はそこは政治家が人事権を握っているわけで、政権交代したら180度変えればいい。いらない天下り団体を2、3個なくしたら2階級特進。いらない規制をなくして部署をなくせば出世させる。さらに今の制度の欠陥を改め、企業がとっくに導入しているクオリティー・コントロールやアフターサービスという発想を取り入れた官僚は特進させるとか。
勝間 米は局長級以上を政権が簡単に差し替えられる。日本のように人事権がないままだと、結局、政治は2、3年でどうなるか分からないので、いい制度が入ってものらりくらりと逃げて、いつか政権交代が起きるのを待ち続けることが容易に想像できるのですが。
長妻 今申し上げているのは、100人以上の与党議員をチームで役所に入れていく。国会議員も、知識があって、マネジメント力があってばかにされない人間でないと務まらない。地元も重要だが、役所の中にいて、役人をやってもらう覚悟で取り組むことが必要になってくる。今の副大臣、政務官は、盲腸と言われている。一番びっくりしたのは、民主党の年金関連部会に来た社保庁の幹部に、年金担当政務官の名前を聞いた時、だれも答えられなかったこと。とんでもない話ですよ。政治家はセレモニー担当、政策は官僚という変な役割分化をしている。もうひとつ官僚をコントロールする方法としてはマニフェストがある。単なる公約集ととらえている人もいるが、そうではなく、政権交代した瞬間に、その紙は民主党の政策集ではなく 。
勝間 誓約書ですね。
長妻 そう、国民からの命令書になる。官僚には、国民が支持したマニフェストを実現するという全体の奉仕者としての役割を果たしてもらう。
勝間 小泉政権はマニフェストを示したが、竹中平蔵さんが言っていたのは、そのうち三つぐらいはできたけども、それでも残りはほとんど骨抜きにされた。その三つも今、骨抜きにされようとしていると怒っていた。
長妻 小泉さんのマニフェストはマニフェストとはいえない。財源も書いていない。工程表もなく、非常に抽象的。期限、財源を明記し、具体的に書く、この三つがあればマニフェストが破壊力を持つ。官僚はバイブルとして扱いなさい、となる。
勝間 局長級以上について、これに従わない場合は職を辞めると。
長妻 そうですね。われわれが個人的な好き嫌いで言っているのではなく、国民の命令書に反抗するのだったら憲法でいう全体の奉仕者としての仕事はできないということになる。
勝間 次の総選挙で、年金問題について工程表入りのマニフェストを作って選ばれれば、政府はそれに従ってやらざるを得なくなる。
長妻 そうです。
(その3「一元化して納税者番号を」につづく)