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日本航空:再建問題 年金が焦点 積み立て不足3314億円、再建を左右

 <世の中ナビ NEWS NAVIGATOR>

 日本航空の再建問題で、企業年金の支給削減が大きな焦点に浮上している。経営の重しになっている年金債務を減らさないと再建が難しいうえ、「年金の水準を引き下げない限り、公的資金投入は難しい」との指摘があるためだ。政府は世論の反応も見極めながら省庁間や銀行団との調整を進め、週内にも方針を示す構えだ。【久田宏】

 ◇利率引き下げ同意が条件に

 日航の企業年金は、会社と社員が積み立てる資金や退職金を原資として運用する基金から支給されるもので、基礎年金、厚生年金に加わる「3階」部分。関係者によると、支給額は受給者によって異なるが、最大で年金の合計が月40万円台になる人もいるという。

 日航によると、今年3月末時点で、将来にわたって支払わなければならない退職金と年金の合計額(退職給付債務)は8009億円。これに対して年金資産は4083億円しかなく、引当金などを除くと3314億円が積み立て不足になっている。運用利率が年4・5%と現在の金利水準よりかなり高く設定されているためだ。積み立て不足は事実上の有利子負債とも言われ、経営の大きな負担になっている。

 このため、前原誠司国土交通相直属の専門家チーム「タスクフォース」は、運用利率を1・5%程度に大幅に引き下げる案をまとめた。実施には現役社員(約1万7000人)とOB(約9000人)の各3分の2以上の同意が必要で、承認されれば積み立て不足を約1000億円に圧縮できると見込んでいる。

 法令では、加入者には現行利率で計算した余命分を一括で受け取って企業年金から離脱できる制度が用意されている。この制度をOBが使った場合、日航にとってはOBへの支給額はほぼ同じになるが、人数と将来支払額が圧倒的に多い現役社員の支給水準が引き下げられる効果が大きい。経営の苦境を肌で感じている現役社員は引き下げをのむケースが多いとみて、タスクフォース関係者は「説明すればほとんどの人が賛成すると思う」と予想する。

 ◇財務省と銀行、削減圧力強化

 だが、現段階ではOBは引き下げに反発しており、もし同意が取り付けられなければ、事態の深刻さは増す。企業年金は賃金の後払いの性格があるため、受給権は強力に保護されている。法的整理の場合も、強制的に減額が可能なのは破産だけで、民事再生法や会社更生法では減額されない可能性が高い。また、企業年金の解散は、確定給付型に移行した日航では事実上困難。こうした事情から、政府内の一部には年金受給額を強制減額する特別立法を模索する動きもあるが、財産権の侵害になりかねないため慎重論が強い。

 一方で、日航再建のために公的資金投入を判断する財務省と、債権放棄やつなぎ融資を求められる銀行団は、年金削減への圧力を強めている。藤井裕久財務相は「世間の良識ある方に答えられることをしなければだめだ」と語り、ある取引銀行幹部も「税金を年金支給に充ててはいけない」とする。日航を所管する前原国交相は難しい判断を迫られることになる。

毎日新聞 2009年10月28日 東京朝刊

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